Dreamfieldへの旅 by 鰻谷

    第1回 「フリオ・ズレータの想い出」

    第2回 「独立リーグを侮ってはイケナイよ」

    第3回 「ここが変だよ、日本版独立リーグ」

    第4回 「ブンブンズ?悪くないねぇ」

    第5回 「君はリックウッド・クラシックを知っておるか?」



     第1回 「フリオ・ズレータの想い出」


     第1回目なので、最初は「私の初マイナー観戦」みたいなネタを書こうかとも思ったのですが、NPBファンの方にも理解し易い話をした方がいいだろうと考え直しまして、現在ダイエーでプレイしているフリオ・ズレータの事について書くことにしました。読者のみなさまも現在の彼のプレイを思い浮かべながら、私の話と比べてみてください。

     マイナー・リーグをしょっちゅう見ていると、実は日本に来る前の外国人選手を生で見ていた、という事が多々あります。今では事情は変わりましたが、ちょっと前までは、だいたい日本に来る外国人選手は3Aくらいでウダウダしてるか、メジャーに定着できずにマイナー・リーグを転々としている選手がほとんどでした。先の五輪でオーストラリア代表として日本打線を見事に抑えたジェフ・ウィリアムズ(現阪神)でさえ、ドジャースの3Aを主な仕事場にしていましたから。

     そして、そんな選手の一人だったマイナー・リーガーのフリオ・ズレータを見たのは1998年7月。所はフロリダ州デイトナ・ビーチのJackie Robinson Ballpark。当時私は3ヶ月に及ぶ球場巡礼の旅に出ており、1ヶ月をかけてフロリダ州をじっくりサーキットしていました。デイトナ・ビーチには1A Florida State Leagueに所属するDaytona Cubsが1993年から本拠地を置いており、古い球場ながら人気チームの傘下ということもあって、リーグ内でも上位の観客動員を誇っています。通称はD-Cubs。ちなみにCubsの3A Iowa Cubsはご想像の通りI-Cubsと呼ばれています。

     デイトナ・ビーチではToronto Blue Jays傘下のDunedin Blue Jaysとのゲームを3試合見ました。入場料は$4.50。私はスコアの付け方は知りませんが、とりあえず初めてのチームを見る時は、球場でスコアカード兼メンバー表を購入する事にしています。というのも、3Aや2Aレベルだと、知ってる選手やプロスペクト(若手有望株)の名前を見つける事ができるのですが、それ以下のレベルになると名前を聞いた事のある選手など皆無、という事も珍しくないからです。そういう場合は、選手個人を見る、という楽しみはなくなってしまうので、開き直ってスタンドでノンビリとゲームを味わいます。ちなみに1Aレベルだと、はっきり言ってズバ抜けてスゴイ選手というのは相当目立ちます。もう身体能力だけで野球をしている人達ですね。そして、私がこの3試合でスゴイと思ったのは、Cubsのファースト兼DHのフリオ・ズレータとBlue Jaysの先発、ビリー・コッチです。

     ズレータはとにかくデカくて、今選手名鑑で調べたら197cmだそうです、パワーでは既に1Aの領域をとっくに超えてました。私が見た3試合でも打ちまくって、強烈に記憶に残っています。
     一方のコッチは、当時は先発をやってましたが、とてつもなく球が速くて、それだけで別世界のピッチャーでした。コントロールが悪かったのはこのレベルでは常識なので、全く気になりませんでしたが...。そして、コッチは翌年、Toronto Blue Jaysのクローザーに抜擢され、100マイルのFireballで、記憶に残るピッチャーの仲間入りを果たしています。

     ズレータに関しては、3試合の中の最後のゲームで感動的なシーンに遭遇してしまいました。7月24日のゲームで3安打4打点とバクハツした彼は、試合終了後に2Aへの昇格の知らせを受け取ったようで、球場の場内アナウンサーがその昇格を放送で紹介しました。すると、そのとき球場に残っていたファンたちは、黙々とチビッコにサインをしているズレータに近寄って、「おめでとう!」やら「がんばれよ!」と声をかけ、ちょっとした送別会のようになったのです。私も彼にはメジャーでプレイするチャンスがあるかも?と思って、普段はサインなんて興味ないのですが思わずもらってしまいました。

     帰国後も、私はズレータを思い出してはネットでその成績を追っ掛けていましたが、そうこうしている内に彼はついにChicago Cubsでメジャー・デビュー。ところが、ここまでは順調だったのですが、守備が使いものにならず、パワーはあるが率が残せない典型的な一発屋だったために彼はメジャーに定着する事ができず、2003年のシーズン途中に日本にやってきました。私は幸運にもその年の10月に甲子園球場で彼のプレイを見る機会を得ましたが、フロリダの田舎町で見たパナマ出身の選手を、何の因果か、地元で再び見る事が出来るなんて...運命のいたずらとは面白いものだと思った次第です。
     ズレータの今後はなんとなく予測できてしまいますが(笑)、また、恐らくどこかのマイナーか独立リーグで選手、あるいはコーチとして再開できるだろうと思っています。

     今回は第1回目なので、相当よそ行きの文章で書いてみました。早い話が、私はズレータが日本に来るずっと前から目を付けていたのだよ、という自慢話ですね。マイナー観戦をしているとこんな事はザラにあります。どうですか?みなさんもNPBやメジャーばかり見てないで、マイナー三昧したくなったでしょ?ちなみに、私とズレータは1975年生まれの同い年だということがあとでデータを調べてみてわかりましたが、これも何かの縁なのでしょうかね?



     第2回 「独立リーグを侮ってはイケナイよ」


     みなさんどうも。マイナー・リーグの観客動員新記録に微力ながら貢献してしまった鰻谷です。今季はMLB、マイナー共に史上最高の観客動員を記録し、どうやらマイナー・リーグは50年振りに、第二の黄金時代に突入したようです。
     そんな折、日本でもようやく「四国に独立リーグ旗揚げ」というニュースが飛び込んできました。この石毛リーグ(勝手につけた仮称です)についてはまたいずれ取り上げたいと思っていますが、とりあえず今回は、独立リーグの事をお話しようと思います。

     現在、北米で最もプレイのレベルが高く、興行的にも成功している独立リーグは間違いなく「Atlantic League」でしょう。1998年創設ですから業界では後発という事になりますが、設備の整った新球場にメジャー経験のあるレベルの高い選手、そしてニューヨークなどの大都市近郊にフランチャイズを置くという革新的な経営手法によって、既存の「Northern League」や「Frontier League」を一気に追い越してしまいました。2004年に同リーグでプレイした主な選手には、世界の盗塁王リッキー・ヘンダーソンを筆頭に、95年のナ・リーグ2冠王ダンテ・ビシェット、一発屋ヘンリー・ロドリゲス、メッツの91年ドラフト2位ビル・パルシファー、日本での登録名「DJ」ことダグ・ジェニングス、プエルトリコの英雄ロベルト・クレメンテの甥っ子エドガルド・クレメンテら有名どころがズラリ。チーム別観客動員数を見ても、全独立リーグチーム中の1位(Long Island Ducks)、2位(Somerset Patriots)、4位(Camden Riversharks)をこのAtlantic Leagueのチームが占めています。

    近代の独立リーグは「Northern League」や「Frontier League」が発足した1993年が元年だと言っていいでしょう。当時独立リーグと言えばMLB傘下のマイナー・リーグですらフランチャイズを置かないような田舎や、あるいはお客さんが全然集まらずマイナーが見切りをつけて出て行った町などに、ひっそりと展開していました。

     そんな中「独立リーグ」という名称の中にあったマガイモノ的なニュアンスを払拭し、現在の「明るく楽しい独立リーグ」ブームの先駆けとなったのがSt.Paul Saintsでした。日本でも「ニュースステーション」で特集された事があるのでご存知の野球ファンも多いと思います。

     St.Paulと言えばユニークなファン・サービスが有名ですが、それ以外にもそれまでの独立リーグのチームにはなかった大きな特徴が2点あります。
     まず、MLBがフランチャイズを置くミネアポリスという大都市の近郊にチームを立ち上げた事。2つ目はダリル・ストロベリーやジャック・モリスといったメジャーで活躍した元スター選手と契約した点です。人気のない田舎町より、MLBと競合するリスクを負ってでも人口の多い大都市近郊に寄生し、MLBのお客さんを横取りするというコバンザメ的手法を成功させた結果、スタジアムは連日、チケットがソールド・アウトとなって賑わいました。また、St.Paulでの活躍が認められたダリル・ストロベリーはヤンキースとの契約にこぎつけ、見事メジャーにカムバックしました。

     まとめますと、

     1.大都市近郊に寄生し、ある程度のお客さんを確保。
     2.一度落ちぶれた元メジャー・リーガーを再生して再びメジャーに売る(この選手売買が球団の財源にもなるわけですね)。

     これらが、St.Paulの名を全米中に知らしめた全く新しい経営術だったのです。

     これをリーグ全体で実践したのがAtlantic Leagueと言っても過言ではないでしょう。
     1に関してはニューヨーク 近郊に4チーム(Long Island、Somerset、Bridgeport、Newark)、フィラデルフィア近郊に1チーム(Camden)があり、2に関してはもはや数えきれない程の卒業生がメジャーで再びプレイの機会を得ています。
     現在ではNorthern Leagueがシカゴ近郊に、Frontier Leagueがセントルイス近郊に、Northeast Leagueがボストン近郊にそれぞれ新球場を建設してフランチャイズを置いており、独立リーグ出身の選手がどんどんメジャーに契約を買われております。
     以前日本ハムファイターズで活躍した今関投手も、昨年まではAtlantic LeagueのBridgeportに所属してメジャーのオファーが来るのを待っていたようですが、本人曰く、マイナー契約のオファーしかなかったので、アメリカでのプレイはあきらめたようです。

     現在の独立リーグは、もはや勝ち組と負け組の格差がハッキリついています。勝ち組はいい球場、1試合平均4000人以上のお客さん、有望選手をメジャーに売って契約金がっぽりのウハウハ安定経営。負け組は薄暗い照明のボロ球場、1試合平均2000人も集まらない閑散としたスタンド、毎年移転や活動休止→復活の繰り返しで赤字垂れ流しのトホホ不安定経営です。
     野茂英雄が中心となってオーナーを務めているNortheasern LeagueのElmira Pioneersはあきらかに後者ですが、このようなケースは大抵オーナーがビジネス以外に野球に関する特別な思いを持っている事が多いようです。言うなれば「道楽」とでも申しましょうか。この点はさすがアメリカだと思いますね。スポーツに関して懐が深い。

     ちなみに観戦する側としましては、どちらの試合もやはりそれなりに味わいがあって、楽しめるんですよね。プレイのレベルは高いに越したことはないでけど、独立リーグ独特のゆるい雰囲気や「今、すごく貴重なモノを見ているッ!」という自己満足感が好きです。私の好みといたしましては断然後者のボロ球場ですね。

     Atlantic Leagueは来シーズンから5,700席の新球場をホームにするLancaster Barnstormers(ペンシルヴェニア州)というチームが新たに加わる予定で、さらに観客動員を増やしそうです。

     みなさん如何ですか?MLBという後ろ盾がなくとも十分にビジネスになっている独立リーグ、興味がわいてきたでしょ?思わぬビッグ・ネームがあなたを待っているかも知れませんよ?実際、私はNewarkでリッキー・ヘンダーソンにサインをもらってしまいましたよ。ウハハ!

     最後に、マイナーリーグならびに独立リーグベスト5の観客動員数のリストをつけておきましょう。ご参考までに。


    【チーム名】
    【クラス】
    【Season Total】
    【1試合平均】
    Sacramento River Cats
    3A
    817,317
    11,512
    Memphis Redbirds
    2A
    794,550
    11,035
    Round Rock Express
    2A
    670,176
    9,574
    Louisville Bats
    3A
    659,340
    9,158
    Buffalo Bisons
    3A
    621,206
    9,003
    Pawtucket Red Sox
    3A
    615,540
    9,052
    Indianapolis Indians
    3A
    571,894
    8,056
    Dayton Dragons
    571,094
    8,398
    Fresno Grizzlies
    3A
    563,079
    8,044
    Toledo Mud Hens
    3A
    547,204
    7,707

    注)Round Rock Expressは2005シーズンより3Aクラスになることが決定している



     第3回 「ここが変だよ、日本版独立リーグ」


     みなさんどうも鰻谷です。
     World Seriesも日米野球もMLB各賞発表も終わってしまい、すっかりオフ・モードになってしまいましたね。

    Baseball Madのみなさんは、オフは何をして過ごしますか?
     私は今年からラグビーを見始め、週末はせっせと花園ラグビー場に通っております。天然芝の上で繰り広げられるマッチョなオトコ達の肉弾戦はなかなかエキサイティングです。

     さて前回、四国独立リーグの事に触れましたが、今回もこの話題でひっぱろうと思います。

     このところ、石毛リーグに続き、「東北インディペンデント・リーグが2006年に旗揚げ」、「北米系独立リーグが2006年に日本に進出」、「江本孟紀氏がNorthern Leagueのエクスパンション・チーム(Calgary Force)のスペシャル・アドバイザーに就任」など、独立リーグ関連のニュースが次々に紙面を賑わせています。
     私が思うに、NPBへのファンの失望感が遂に明らかになってきていて、NPBとは違ったプロフェッショナルなベースボール=独立リーグを求めている、という潜在的世論の噴出が...ゴニョゴニュゴニョ...つまり、NPBとは違った野球に対するニーズが今、市場にあると独立リーグの経営側は読んだのでしょう。
     確かに独立リーグが世に出るタイミングとして、今は絶好の機会でしょう。しかし、独立リーグがビジネスとして成り立つかと言えば、多くの識者が否定的な意見を出しているのが現実です。私はビジネスの専門家ではないのでリーグがどのような皮算用をしていて、それが実現可能な数字なのかどうかはわかりません。が、どうすれば野球好きが球場に足を運ぶような魅力的なリーグになるのか、をファンとして提案してみたいと思います。
     ほとんどの提案は既に誰かが語っていたり、もしくはアメリカのパクリだったりしますが、実際にマイナー・リーグを見てきた上での提案ですのでご容赦下さい。

     まず、外見から入りましょう。まだチーム名、ユニフォーム、キャップ、球団ロゴは発表されていませんが、今後の人気を占う上でもはっきり言ってこれが一番肝要かと思います。
     間違ってもマスターズリーグのようにはなってはイケません。チーム名で絶対NGなのが、「ドンタクズ」などと言う日本語+ズの形。草野球じゃあるまいし、こういうサブい名前にするだけで自らビジネス・チャンスを制限する事になるのでお気を付け下さい。アメリカでは、新球団のチーム名やロゴのデザインがその後の人気を左右すると言っても過言ではありません(先日MLBの新チームWashington Nationalsの球団ロゴが発表されましたが、可もなく不可もなく万人ウケする手堅いデザインでした)。
     マイナー、メジャーはもとより、野球以外の他のプロスポーツでもグッズ売り上げに直接響くので、デザインの変更やチーム名の一新(あるいは先祖返り)は頻繁に行われます。チームのロゴや名前を変えたことで、急に人気チームになった例もあるぐらいです(3A Las Vegas 51sなど)。
     中でも最も重要なのはキャップだと個人的には思っているのですが、ポイントは、野球ファンでなくとも町中で身につける事のできるデザインでしょう。日本人が手がけるとどうしても野暮ったくなるので、日本ハムファイターズのようにアメリカのロゴ制作会社に頼むといいでしょう。宣伝にもなりますし。キャップは、できればアジャスタブルの付いているチープなものではなく、リーグ全体でMLBも使用しているNEW ERA社のFitted Capに統一してほしいですね。選手仕様のものを球場の売店で簡単に、しかも比較的リーズナブルな値段で購入できる環境があれば、言う事なしです。

     外見が決まったら、今度はプレイのレヴェルです。ハッキリ言って、有名強豪大学や社会人に行けるプレイヤーは、独立リーグには来ないでしょう。それに、大学野球や社会人より低いレヴェルのゲームをお金を払って見に来る、物好きなファンがいるのでしょうか?期待はできません。
     ここはやはり、元プロ選手と契約するべきです。彼らがプレイする事によってゲームの質は上がるし、若い選手のスキルは向上するし、選手目当てのファンが球場に来てくれるだろうし、ひょっとしてNPBやMLB傘下のマイナーと契約する選手も出てくるかもしれません。そうなれば契約金がリーグやチームに入って来て潤います(←ここが重要!)。したがって、元プロ選手との契約にデメリットはないように思えます。
     行き先を失った若い選手にプレイの場を提供する、という理念は悪くありませんが、客商売なんですからファンに喜んでもらうのが先決だと思いますが...。

     あと、元プロ選手がダメなら、広島カープのように中南米出身の若い選手を連れてくるのも手です。彼らの身体能力の高さは、MLBで活躍する多くのヒスパニック系選手で十分証明済みです。供給源のルート開拓が難しいかも知れませんが、安いサラリーで能力の高いプレイヤーを連れてくるなら、中南米を無視するワケにはいかないでしょう。日本人選手よりもこちらの方が化ける確率も高く、MLBに売る時も高値がつくかもしれませんしね。

     プレイヤーが決まれば、最後は球場です(私の専門分野です)。野球は好きだが、球場が不潔、強制的な応援がイヤ、食べ物が高くてまずい、などの理由でプロ野球観戦を敬遠する方もいると聞きます。Los Angeles Dodgers元オーナーのピーター・オマリー氏は、「Dodger Stadiumを、彼女をデートに誘えるような場所にしたい」と言ったそうです。現在、日本の球場で彼女を連れて行けるのはヤフーBBスタジアムぐらいでしょうか(ドームは除きます。だってあそこは、ほら、野球場じゃないでしょう?)。

     私は、「ゲームはつまんなかったけど、またこの球場に来てみたい」とファンに思わせるのが球団運営の基本であり、究極の目標だと思います。おもしろいゲームなんてそう滅多にあるもんじゃないですからね。ここでは、ターゲットを土日の親子連れに絞りましょうか。

     親子連れに関しては、楽しむのは子供、お金を落とすのは親、という鉄則を忘れてはいけません。入場料は安く抑え(子供料金は特に)、中の売店やグッズ売り場で親にたんまりお金を落とさせるのです。子供の喜ぶような食事メニュー、グッズ、子供が野球にあきた時の代替商品の開発・研究は不可欠でしょう。目先の入場料より、球場内でファンが落とすお金に注目しましょう。
     それと子供に悪影響を与える大人の汚いヤジやタバコの煙、過度の飲酒は場内警備員が注意するような環境が望ましいですね。もちろん子供が最前列のフェンスにしがみついたり、ゲームの空気を読まずに選手にボールをねだる様も見苦しいので、そこは警備のみなさんには活躍してもらわねばなりません。子供を大事にするあまり、普通の野球ファンに逃げられては元も子もありませんからね。特に日本では親がついてながら、「子供がやってる事ですけど何か?」という甘ったれた過保護な空気が蔓延しているので球場のセキュリティの質は重要です。

     またアルコールを販売するのなら(当然しますわな)、ファミリー・セクションとアルコール・セクションの分離は必ず行わなければいけませんね。あと、ナイトゲームなら試合終了後の帰りの足の確保も課題です。最寄りのJRの駅までのシャトルバスなどは主催者側が用意するのが理想ですね。確実に帰れる、というのはナイトゲームを観戦する上でかなり重要なファクターです。この安心感があるとないとでは、客足の伸びは大分違うと思いますが如何でしょう?

     以上、私の提案を挙げてみました。これぐらいのレヴェルを独立リーグが実現できるなら、少なくともNPBのファーム公式戦には勝てると思います。また、全国の野球好きが各地から遠征してくるに値するゲーム・球場の雰囲気が期待できるでしょう。個人的には、独立リーグには成功してほしいと思っています。我々Baseball Madも、あたたかい目で見守りましょう。春が待ち遠しいですね。



     第4回 「ブンブンズ?悪くないねぇ」


     みなさんどうも鰻谷です。先日来季のセ・パ公式戦、交流戦、オープン戦の日程が発表されました。早くも遠征の予定を立てている熱心なファンの方もいらっしゃる事でしょう。個人的には5月のF−S@札幌円山球場、6月のM−H@韓国に注目しております。是が非でも行きたいですねぇ。

    さて、今回はマイナー・リーグのチーム名について取り上げてみようと思います。仙台の新チームは結局Golden Eaglesに決定いたしましたが、ライブドアが候補にあげていたPhoenixやMLBの新チームWashington Nationalsなど、なにかとチーム名に注目が集まったここ数ヶ月でした。チーム名と言えばやはり珍名の宝石箱、マイナー・リーグを素通りするワケにはいきません。日本では滅多に耳に触れる事のないダサカッコイイ名前の数々をご紹介いたしましょう!

     まず、やはり圧倒的に多いのが地元に縁のある動物をチーム名に頂くパターンですね。比較的わかりやすいBisons(野牛)、Bulls(雄牛)、Lynx(山猫)、Bats(蝙蝠)、Grizzlies(灰色グマ)、Bears(黒クマ)、Beavers(ビーバー)、Pelicans(ペリカン)、Sea Dogs(アザラシ)、Mustangs(野生馬)、Jackals(ジャッカル)、Cougars(クーガー)、Otters(カワウソ)からDragons(竜)、Raptors(恐竜)まで色々あります。また強いのか弱いのかわからないSnappers(カミツキガメ)、Catfish(鯰)、Crawdads(ザリガニ)、Sand Gnats(ブヨ)、Osprey(ミサゴ)、Chukars(イワシャコ)、Roosters(おんどり)、Grasshoppers(バッタ)なんてのも。フロリダならではのManatees(マナティ)、Hammerheads(シュモクザメ)、Threshers(オナガザメ)、アリゾナならではのScorpions(サソリ)、Sidewinders(ガラガラヘビ)、Javelinas(ハベリナ)、Desert Dogs(砂漠犬?)、Saguaros(サボテン)など地方色全開のものもあります。最近は猫がらみが流行っているようでRiverCats、Rock Cats、Fisher Cats、Hillcats、Alley Cats、ValleyCats、RailCats、Cracker-Catsなどとりあえず猫のアタマになんか付けてみました、ってのが多いですねぇ。

     動物でなくとも、地元の名物からそのまま名付けるパターンも多いです。レイニア山からRainiers、ルックアウト山脈からLookouts、グレート・スモーキー山脈からSmokies、カソリックの修道院からMissions、国内最大の内陸港からPorts、遊園地のジェットコースターの名前からCyclones、核エネルギーの研究所があることからIsotopes(元素の同位体の意)、航空宇宙産業が栄えているのでStars、紡績業が栄えていたのでSpinners(紡績機)、原油採掘機械からDrillers、地元で採掘される鉱物からBlue Rocks、南部料理からBiscuits(ケッタッキーで売ってるあのビスケット)などなかなかヒネリの効いているのもあります。特におもしろいのはUFOの秘密基地があるといウワサのエリア51から名付けられた51s、ジョージア州オーガスタで行われるゴルフのマスターズ・トーナメントの勝者に贈られる賞品(?)からGreenJackets、地元名物のステーキ料理からT-Bones、メキシコとの国境に面しているのでスペイン語の「悪魔」をそのまま使ったDiablos、ネジをチーム名にしてしまったLugnutsなど、アメリカ的センスが爆発しています。このあたりはいくら頑張っても日本にはマネできない発想でしょうね〜。

     「物」ではないですが、地元に縁のある名前としてカナダのCanadians(NHLのモントリオール・カナディアンズはフランス風にCanadiensと綴ります)、いかにもアメリカ北東部らしい愛国精神の象徴Patriots、ダイヤモンド採掘夫Diamond Jaxx、きこりを意味するLumberjacks、テキサスならではのRoughRiders(荒馬乗り)、カウボーイと同じ意味のWranglersなど。この辺りは相当カッコイイですね。

     MLBにはWhite SoxとRed Soxという2つのSocksがありますがマイナーにもSky Sox、Baysox、Aquasox、Solar Soxがあります。SocksをSoxと綴るのがポイントかな。

     アメリカらしいなと思うのは戦争関係のチーム名があることです。Bombers(爆撃機) 、Cannons(大砲)、Red Barons(第一次大戦時に活躍したドイツの撃墜王の愛称。機体を赤に塗っていた為こう呼ばれた)など。時節とか時代の空気を読まない所がスゴイです。

     密かに昨今流行っているのが自然現象や精神性な言葉をチーム名にする事でしょうか。個人的にはベースボールっぽくないと思うのですが如何でしょう?ThunderBolts(雷鳴)、Thunder(雷)、Storm(嵐)、Quakes(地震)、Avalanche(雪崩)、Curve(カーブ)、Swing(スウィング)、Miracle(奇跡)、Freedom(自由)、Spirit(精神)、Pride(誇り)、Power(力)、Force(力:Star Warsやないんやから...)など。なんか俗っぽさがなくて私は嫌いですね。

     オーナー冥利に尽きるのが、自分の名前をチーム名にしてしまうケース。ナベツネズやツツミーズはありませんがExpress(ノーラン・ライアンのニックネーム)、Intimidators(デール・アーンハートのニックネーム)、IronBirds(カル・リプケンのニックネーム)、Doubledays(オーナーではないがベースボールを考案したという伝説の人物アブナー・ダブルデイから)などが実在します。

     最後に、野球というカテゴリからは一部外れますが、私が気に入っているチーム名を挙げて終わりましょう。NHLのSt.Louis Blues(ブルースの名曲からそのまま)、NBAのNew Orleans Jazz(現Utah Jazz:ニュー・オリンズはジャズ発祥の地ですね)、NFLのBuffalo Bills(西部開拓時代のガンマン:バッファロー・ビルから。こりゃダジャレですな〜)、マイナー・リーグのSalt Lake Buzz(現Stingers:バズとは虫のブ〜ンという羽音でNBAのJazzとひっかけた名前。映画『メジャーリーグ3』ではブンズンズという迷日本語訳を生んだ)、独立リーグのWashington Wild Things(もちろんあの曲からでしょうね♪)。どれもシャレの効いたおもろい名前だと思います。もし私がテネシー州のチームのオーナーになる事があるなら、そのチームにはズバリTennessee Waltzと名付けようと密かに思っています。パクられると嫌なのでこのアイディアは決して他言しないで下さいね(笑)!



     第5回 「君はリックウッド・クラシックを知っておるか?」


     明けましてオメデトウございます。鰻谷でございます。年明け早々うれしいニュースが飛び込んできたので、宣伝の為、みなさんにも報告しておきますね。

     栃木県の日光市を本拠地にしているアイスホッケー・アジアリーグの「日光アイスバックス」が、来季から日光市に加えて、神戸市もフランチャイズにする事が発表されました。今流行のWフランチャイズゆうやつですな。私を含めた関西在住のホッケーファンは、大いに期待しております。チーム存続の為にも、来季はせっせとリンクに通うつもりです。ホッケーを生観戦した事のない関西人のみなさんは、是非この機会に見て下さい!ジャッとスケートが氷を削る音、カツンッとスティックがパックを叩く音、ドゴンッと巨体がボードに叩きつけられる音...色々な音のハーモニーが貴方を魅了する事請け合いです!

     さて話題は変わりまして、今回のお題は地方試合についてです。地方試合と言っても、岐阜長良川球場や旭川スタルヒン球場でのゲームではありません。私が語るのは、常にアメリカ野球のことです。アメリカではフランチャイズ制がガッチリ強固なので、ホームゲームは全試合本拠地球場でやるのが常識です。でも実は、ごくごく一部のチームだけは本拠地球場以外で公式戦を行う事があるのです。
     有名なのは旧Montreal Expos(現Washington Nationals)のプエルトリコ・シリーズですね。プエルトリコ島はカリブ海に浮かぶ島で、現在はアメリカの自治領になっています。ロベルト・クレメンテやアロマー兄弟、イヴァン・ロドリゲス、カルロス・ベルトランら名選手を多く産出し、2001年にはToronto Blue JaysとTexas Rangersの開幕戦も行われています。
     Exposは本拠地のOlympic Stadiumにあまりにも客が入らないので、2003年と2004年に首都サン・ファンのHiram Bithorn Stadiumでそれぞれ22試合ずつ公式戦を行いました。2003年はモノ珍しさのため客の入りも上々でしたが、2年目の2004年は早くも飽きられてしまい、散々な結果に終わりました(対戦相手に有名なプエルトリコ出身選手がいなかった事も原因でしょう)。私も2004年に見に行きましたが、正味マイナー・リーグ並みの客の入りでした。

     地方試合と言えば、東京ドームもそうでしょう。2000年にはChicago CubsとNew York Metsが、2004年にはTampa Bay Devil RaysとNew York Yankeesが開幕戦を行いましたね。またSan Diego Padresが1996年にハワイ州ホノルルとメキシコのモンテレイで公式戦を開催しており、MLBは将来的に、イギリスのロンドンや韓国での興業も視野に入れているそうです。

     さて、そろそろ本題に入りましょうか。今回のタイトルにもなっている、「Rickwood Classic」についてお話しましょう。

     マイナー・リーグのAA(Double-A)に、Birmingham Baronsというチームがあります。アメリカ南部の工業都市アラバマ州バーミンガムをフランチャイズにするSouthern League所属の球団で、現在はChicago White Soxの傘下に入っています。かのマイケル・ジョーダンがNBAを一旦引退してMLBに挑戦した際に配属されたチーム、と言えばわかるでしょうか。1995年当時、世界でイチバン有名なマイナー球団だったと言っても過言ではありません。

     そのバロンズは1988年から現在のHoover Metropolitan Stadiumをホームにしていますが、1987年まではRickwood Fieldというボロ球場でプレイしていました。しかし、このボロ球場、ただ古いだけじゃないんですね。筋金入りの古さなんです。探せば古い球場などワンサカ出てきそうなアメリカにおいて、なんと公にAmerica's Oldest Ballparkと認められているのです!MLBイチの古さを誇るボストンのFenway Parkは、1912年開場。そしてこのRickwood Fieldは、それを上回る1910年の開場なんです。もちろん現在もキチンとメンテナンスされていて、地元のアマチュア野球によく使われているそうです。そして、かつての住人だったバロンズも、年に一度だけ、毎年6月に、この”アメリカで最も古い球場”で公式戦を行っているのです。それが"Rickwood Classic"なのです!

     快適な新球場があるにもかかわらず、古い球場に敬意を表し、オールド・ファンのため、支えてくれている地元コミュニティのために、オープン戦ではなく、公式戦を開催する球団。特別な球場でのゲームという事もあって、バロンズと対戦する相手は、20世紀初頭の、ダブダブブカブカのクラシック・ユニフォームでプレイします。いい話じゃないですか。野球を”企業広告のひとつ”としてしか認識していないどこぞの国のリーグとは、えらい違いです。アメリカでは、スポーツは敬意を払う対象であって、それが人々に浸透している=それを文化って言うんやなぁ、と心底思えるお話です。
     私も「球場巡礼」をライフワークとしている者のハシクレ。いつかはこの球場に足を踏み入れたいと思っております。そんな歴史的な球場のシートに腰掛けてゲームを見ている自分を想像するだけでワクワクしてきます。ここで書いたからには今年こそ実現させねば...!?


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