ベースボール・ビジネス by B_wind

    ベースボール・ビジネス特別編1 引き分けと勝利至上主義と勝敗の美学

    ベースボール・ビジネス特別編2 1リーグ制の意味

    ベースボール・ビジネス特別編3 スト考察号

    ベースボール・ビジネス番外編1 球団合併その1

    ベースボール・ビジネス番外編2 プロ野球協約から見た『球団合併2』



     ベースボール・ビジネス特別編1 引き分けと勝利至上主義と勝敗の美学


     イギリス生まれの代表的スポーツ,サッカー,ラグビー,ホッケーには引き分けという制度があります。これに対しアメリカ生まれのベースボール,バスケットボール,バレーボール,アメリカンフットボールには引き分けがありません。イギリス生まれのスポーツに引き分けという制度があったのは,イギリスのスポーツが上流階級の社交の場として生まれた経緯から,勝敗よりもフェアに堂々と全力でプレーすることを重視していたからと思われます。これに対しアメリカのスポーツには引き分けがなく試合を延長してでも決着をつけようとします。これはアメリカの社会が競争社会で,スポーツにおいても勝利至上主義が求められたからといえます。これに対し我が国では,相手のミスにつけ込んだ勝利は良しとせず,下品な勝負,奥ゆかしさのない勝負を避けようという「勝敗の美学」が存在することがあげられます。「勝敗の美学」が存在する中での争いは「美的で淡泊」になりやすくなります。(以上参考文献 「スポーツの風土」中村敏雄著,大修館書店)

     ルール上も勝利至上主義をとるベースボールが,我が国で引き分けが存在するのはこの「勝敗の美学」観によるものではないでしょうか。ここまでに両者頑張ってきたわけだから引き分けでもいいではないかという「美的で淡泊」な勝敗観によるもののように思われます。

     ところで,ベースボールおける勝率1位というリーグ戦の勝者を決めるルールは1884年ナショナル・リーグが採用し,19世紀末に既に確立したものです。引き分けがないわけですから勝率1位の球団が最多勝利者なのは当然です。勝率は,リーグ戦での順位争いを分かりやすくファンに明示するために考えられたものと思われます。引き分けがないから勝率1位=最多勝=優勝者なのですが,引き分けが存在するNPBでは,勝率1位が必ずしも最多勝とはなりません。引き分けのないベースボールに引き分け制度持ち込んだこと,そしてそれにも拘わらず,大リーグと同じようにリーグ戦の順位に勝率制を採用したことにNPBの順位制度の矛盾が内在しているといえます。

     話は変わりますが,Jリーグ発足時,サッカーの引き分け制が日本に受け入れられにくいということでサドンデス延長戦,PK戦による勝敗の決着をJリーグは採用しました。ここでスポーツの母国文化との逆転現象がベースボールとサッカーで起きてしまいました。本来引き分けの存在を前提としているイギリス生まれのサッカーでは,引き分け制度を否定され,引き分けのないはずのアメリカ生まれのベースボールでは引き分けが存在するというスポーツ文化を否定した行動がとられました。Jリーグの引き分け否定と「勝敗の美学」観との間に矛盾がないか,ですが,サッカーは,得点が少なく引き分けが多かったこと,延長戦もないことも多く,「勝敗の美学」を損ねるということで矛盾はなかったのだと思います。

     最後に,アメリカのスポーツが勝利至上主義といいましたが,アメリカ生まれのスポーツの中でも最もアメリカ的といえるベースボールとアメリカンフットボールは,勝利至上主義だからこそ,プロセスを細分化することにより結果である勝利のためのプロセスを明示化したスポーツになったのだと私は考えます。



     ベースボール・ビジネス特別編2 1リーグ制の意味


     BS朝日が9月5日午後9時から放送する「田原総一朗の熱論90分スペシャル−ライブフォーラム−プロ野球が元気になれば、ニッポンが元気になる!?」の収録が8月23日行われ、そこでゲストとして出席した竹中金融・経済財政担当相が「インターリーグの数が増えていったときに、結果的にそれは1リーグと同じじゃないか」という発言をしたそうです。これは、当日参加された当「ぼーる通信」編集長のMBさんから伺った話です。

     そもそも、プロ野球をはじめとする、チーム・ボールゲームの興行方式は、リーグ戦が基本となります。総当たり戦のリーグ戦は、試合数が事前に確保され、優勝の機会も均等なため、あらかじめ選手に多額の投資が可能になります。勝ち抜き戦のノックアウト方式では、初戦で負けてしまえば次の試合はなくなり、選手への報酬を賄うことが出来きません。プロスポーツを長期に渡って運営していくためには、リーグ戦により長期に安定した収入を確保することが不可欠となります。

     ところが、このリーグ戦には、消化試合という欠点があります。リーグ戦は総当たり戦ですから、優勝や順位が決まっても、リーグ戦は継続されます。消化試合は、リーグ戦という商品価値がないので、集客力が低下します。それでは、このリーグ戦が持っている消化試合という欠点をいかに克服したらよいのでしょうか。その方法には二つあります。一つは戦力の均衡化であり、一つは競争の多元化です。

     戦力が一部の球団に偏っていると、消化試合が増えます。そこで、この戦力の偏りをなくす方法が戦力の均衡化です。直接的な戦力の均衡化に、ドラフト制があります。間接的に戦力を均衡させる方法としては球団の選手年俸総額を規制するサラリーキャップ制と球団の収益を均衡化することにより対選手投資額を均衡化するレベニュー・シェアリングがあります。また、レベニュー・シェアリングの手法を使って、球団の選手年俸総額の均衡を図るものものとしてMLBで採用されているラグジュアリー・タックス(ぜいたく税)があります。

     日本のプロ野球界では、この戦力の均衡化策は不十分であり、唯一採用されているドラフト制も自由枠によって骨抜きにされています。次に競争の多元化を見てみましょう。

     リーグ戦を飽きさせず最後まで盛り上げるには、リーグ戦の中にいろいろな競争があればいいのではないか、ということで米国4大スポーツにしろ、欧州サッカーにしろ、リーグ戦といっても一つの競争ではなく、そこには多元的な競争が展開しています。

     競争の多元化の中で、代表的なものが、二分対立という2リーグ間競争です。これは、アメリカ4大スポーツや日本のプロ野球のようなクローズドなリーグで見られるものです(ただし、NFL、NBA、NHLでは、2リーグではなく、2カンファレンス制です)。サッカー欧州リーグのようなオープンなリーグでは、1リーグといっても、入れ替え制や多国間競争があります。入れ替え制や多国間競争のないクローズドなリーグでは、2リーグ制という人為的な対立軸を構築することが不可欠となります。

     日本のプロ野球はこの2リーグ制をとっており、リーグ対決となる日本シリーズとオールスターゲームは、盛り上がりを見せます。また、優勝争いも、2つのリーグ内競争(公式戦)と1つのリーグ間競争(日本シリーズ)の計3つになります。これに対し、リーグ対決のないJリーグのオールスター戦と2ステージの優勝決定戦は、イマイチ、盛り上がりが欠けます。

     ところが1リーグ制では、この2リーグ制の二分対立のメリットがありません。さらに、クローズドな1リーグ制では、優勝争いが1つだけになってしまい、消化試合というリーグ戦の欠点がもろにでてきます。1リーグ10球団や8球団になると、優勝できる確率も、6分の1から10分の1、8分の1に低下することになります。

     二分対立という対決軸を包含している2リーグ・インターリーグと、それを持たない1リーグ制とでは、全く別次元のものなのです。競争の多元化に反する単純な1リーグ制は、リーグ戦の欠点である消化試合を今より増やすだけです。

     戦力の均衡化どころか、逆に戦力の不均衡化が進む日本のプロ野球において、もう一つの消化試合解消策である競争の多元化(2リーグ制)を止め、競争の単純化(1リーグ制)を目指すことは、まさに、日本プロ野球の自殺行為です。



     ベースボール・ビジネス特別編3 スト考察号


     ●雇用問題

     オリックスの宮内オーナーは、9月8日のオーナー会議後の記者会見で「(各球団に)一番協力していただいたのが(合併によって)選手を路頭に迷わすことはしないということ。全選手を全チームがピックアップして雇用を維持するということを、一番最初に決めました。それについて、選手会が統合を反対するというのは、労働組合としては非常に不思議なストライキだな、と。何を要求するのか」と述べています。

     そもそも、特殊技能者であるプロ野球選手の雇用は、一般の雇用とは意味が異なります。特殊技能者の雇用は、その特殊技能を発揮する場の雇用でなければ意味を持ちません。特殊技能を発揮できなければ、特殊技能の対価としての報酬を得ることができません。選手会側が主張しているのは、特殊技能を発揮できる場の確保なのです。球団数が減れば、1軍で試合ができる選手は、その分減ることになります。「1球団の保有選手を増やし、全選手を雇用しましたよ」といっても意味がないのです。

     プロ野球の選手は、1軍で実績を残して「いくら」の世界であり、逆に、1軍で実績を残せなければ契約を打ち切られてしまいます。実際、プロの世界では、そうでなければならないはずです。1軍で活躍できる見込みのない選手を何年も雇用できる余裕など今のプロ野球にはないはずです。1年たてば、多くの選手が実績が残せず、球界を去ることになるでしょう。なぜなら、実績を残そうにも残す場が減ってしまっているのですから。

     「全選手を全チームがピックアップして雇用を維持する」という雇用は、選手にとって意味がありません。1年契約が延長されたに過ぎないのです。こんな雇用話に反対するストライキは、不思議でも何でもないのです。特殊技能者として、れっきとした雇用を守るためのストライキなのです。

    ●経営問題

     宮内オーナーはさらに続けて、「パ・リーグは徐々に観客動員が増えているが経費、とくに選手の参稼料(年俸)が急騰して経営が苦しくなっている。(合併を)1年延期するということは、1チーム数十億円の赤字が発生するんです。それを選手が負担してくれるのか。代案のない一方的な申し入れです。労働条件についてはいくらでも話をさせていただく。ぜんぜん違うところでストライキといわれて戸惑っている。一番迷惑をこうむるのはファンではないのか」と述べています。

     しかしながら、合併凍結後の球団は、なにも近鉄が経営しなくてもよいはずです。残った11球団で管理会社を作り、球団経営を行えばそれで済むことなのです。必ず1球団が余る奇数球団制は、あまりにもデメリットが大きく、それなら、管理会社を作って残った球団でその赤字分を分けた方が、11球団制より損失は少なくなるはずです。

     そもそも、近鉄買収を求め、それができなければ新球団での参加を求めているライブドアに球団売却し、2リーグ・交流戦を推し進めた方がよいのは明らかなのです。このライブドアが信用できないのであれば、1年間この管理会社の運営をライブドアに委託すればいいのではないでしょうか。

     あと、「とくに選手の参稼料(年俸)が急騰して経営が苦しくなっている」という話は、経営者の責任を選手側に押しつけています。そもそも、選手年俸の高騰を招いたのは、93年のFAとドラフト逆指名の導入からです。これは経営者側が決めたことであり、その推進役となったひとりが、パ・リーグ西武の堤オーナーです。今回、選手会側は、自ら、選手年俸の抑制策の一つであるぜいたく税の導入と年俸減額幅の拡大を提唱しています。本来、これは経営者側が行うべきものであり、まさに経営者側の怠慢行為なのです。

    ●新規参入問題

     パ・リーグ村田繁事務局長「私見ですが」と前置きした上で、「監督やコーチ、選手が誰か決まっていて、球団の形がなされていなければ申請は通らないのでは。シダックスのようにすでにチームがあり、草薙球場を本拠地にしてというような構想があれば加入を検討されると思いますが」と話したということです。

     パ・リーグはそもそも、リーグ運営の責任を負っています。また、参加球団が奇数になればリーグ運営がうまくいかなくなることは明白です。協約上も、合併や破産・脱退する球団があった場合、リーグを守るために、その球団の選手をリーグがいったん預かり、リーグ会長が買収先を探すことになっています。その義務と責任を放棄し、合併という言葉で1球団の消滅を許し、会長自らダイエーにロッテとの合併を働き掛けるという言語同断のことを行ったのがパ・リーグなのです。

     消滅しようとしている球団に、選手がいます。パ・リーグ会長は、協約57条でダイエーに脅しをかけましたが、本来、57条で近鉄の選手をリーグで保有し、新規加入を求める球団に譲渡しなければならないはずです。パ・リーグ自ら、57条を守らず、球団が消滅するにも関わらず、選手を独占し、新規参入希望球団に選手を譲渡しないこと、それに加えて、そうしておきながら新規参入希望球団に選手がいないから参入資格がないと断ることは、まさに、公正な取引の妨害でしかありません。

     シダックスのような社会人チームが、そのまま、新規参入を希望してきた場合、選手たちは、元プロ野球出身者を除けば、オール新人ということになります。すると、新人選手は、ドラフト指名を受けなければ、球団と契約することは協約上できないはずですから、逆に、シダックスの方が協約上問題となります。こういうことがあるので、MLBでは、球団数を拡大するとき、既存選手のエキスパンション・ドラフトを行います。新規参入球団にこういったフォローがあるため、MLBでは、新規参入に対する加盟料が存在しています。



     ベースボール・ビジネス番外編 球団合併その1


     6月13日大阪近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブが今季終了後、合併することで合意したことを近鉄側が発表しました。

     大阪近鉄は1月31日、30億円の赤字解消のためとして球団名売却案を発表しましたが、読売の渡辺オーナーから「協約違反」、西武の堤オーナーから「理解に苦しむ」、根来コミッショナーからは「多勢に無勢」と猛反発をくい、2月5日には撤回を発表しています。(2004/02/06サンスポ)

     5月25日、親会社の近畿日本鉄道の岩田和弘専務は球団経営について、「聖域を設けずに、いろいろな施策を打っていく」などと述べ、売却も視野に入れた検討を進めていることを明らかにしました。その中で、近鉄の決算上は大阪バファローズへの委託費などを含むため、野球事業が実質40億円近い赤字になっていることが明らかになりました。近畿日本鉄道は、1兆5000億円を超える有利子負債を抱えて、不採算事業の整理、再編など合理化を進めています。(2004/05/25日刊)

     これに対し、読売の渡辺オーナーは、「球団の合併というのもあるが、野球協約上まだ不備な点がある。また、勝手な球団売買は許されないから、いい加減な企業には売れない」さらに、「この問題は、7月のオーナー会議で議論することになるだろう」と話したそうです。

     近鉄側の発表によれば、4月後半からオリックスの宮内オーナー側から打診があったそうですから、読売の渡辺オーナーは、5月のこの時点で合併話を知っていた可能性もあります。

     そもそも大阪近鉄バファローズは、何年も前から身売りの噂が出ていています。2001年には、アメリカのドジャースとの提携の際、当時ドジャースのオーナーでありFOXグループの総帥であるマードック氏による買収の噂が流れました。(2001/04/01毎日)

     2002年9月には、近鉄側は、消費者金融のアイフルに共同出資を提案しています。2003年には、同じく消費者金融会社のアコムと1年間のスポンサー契約を結んでいます。(2002/11/26スポニチ)

     後者の消費者金融に対して読売の渡辺オーナーは、「そこまで堕落したのか。断じて許せない。そういう球団には出ていってもらうのが一番」「ビジネスの自由もあり、仕方ないが、プロ野球の品位を汚す。そういう球団は滅びる。パ・リーグもつぶれるぞ」(毎日新聞)と批判しています。

     マードック氏の件については記録が残っていませんが、福岡ダイエーの外資売却の件で読売の渡辺オーナーは、「安く買って高く売るというハゲタカ商法に売ったら、プロ野球の将来がなくなる。どうしても12球団じゃないと、というのはない。野球協約による57条とかの緊急措置も必要かもしれない。解散することがあっても、1球団の選手枠を増やして、ウエーバーで選手を取っていけば(ダイエーの選手は)全員、救済できる。」(2003/09/10報知)と外資企業の出資や売却に対し猛反対しています。

     このように大阪近鉄バファローズは、外資や消費者金融会社への売却、球団名の売却といった球団再建策がことごとく頓挫し、せっぱ詰まった状態にありました。オリックス・ブルーウェーブもまた、大阪近鉄が破産したら次なる削減の対象となる恐れが高い球団でした。大阪近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併合意は、最後の生き残り策であり、1リーグ論者に対する最後っ屁ではないでしょうか。



     ベースボール・ビジネス番外編2 プロ野球協約から見た『球団合併2』


     今回の合併劇は、ちょっと話の進み方がおかしいのではないでしょうか。新たな買い手を捜そうとはせず、合併容認で話がどんどん進んでいます。焦点は、「選手の救済策はどうしようか」、「5球団でリーグ戦をやるのは難しい」「1リーグ制にしようか」という話になっています。

     オリックス・近鉄両球団は、合併だから「保護地域として大阪府と兵庫県の二地域を認めろ」「両チームの主力20選手を優先的に契約させろ」と主張しています。普通の会社の合併なら、両社の権利を合併後の会社が引き継ぐのは当然ですし、これらが認められなければ、合併のメリットもありません。さらに、コミッショナーも含めてオーナー達は、野球協約には合併についての規定が曖昧で不備があるとしています。

     そもそも、オリックス・近鉄両球団の主張は、普通の会社の合併とは異なることが分かっているからわざわざこのような主張をするわけです。地域権や選手契約権・保留権(以下「諸権利」といいます。)が球団固有の権利であれば、合併後の新球団は、当然に二球団分の権利を引き継ぐことになります。ところが、当然には、新球団には合併前の球団の諸権利を引き継ぐことはありません。なぜなら、諸権利は日本プロ野球組織(NPB)が参加資格を有する球団に付与しているものだからです。

     協約36条の2で、破産や脱退などで参加資格を喪失した球団は、「地域権及び選手契約権ならびにその保留権」を喪失するとされています。協約36条によれば脱退の恐れがある球団からは、これらの諸権利を取り上げる処分もできることになっています。

     プロ野球における球団とは、協約27条で「この組織に参加する球団は・・・株式会社でなければならない」とされています。つまり、球団は株式会社ですから、吸収合併であれ、対等合併であれ、法人としては合併は可能です。ところが、球団としては合併はほとんど意味を持ちません。

     協約27条が本来意味しているところは、一球団=一株式会社=一参加資格です。一つの株式会社に、二以上の球団を保有することは認められないし、当然に二以上の参加資格及びその諸権利を保有することも認められません。これは、他球団の株式所有を禁止した183条を持ち出すまでもないことです。

     NPBとその参加球団との関係は、フランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟店)との関係にあると考えた方がわかりやすいと思います。「球団が、NPBに加盟する」ということは、「本部」であるNPBが、「加盟店」となる球団にNPBの参加資格を与えるということです。そして、はれて球団が「加盟店」として認められる(=球団がNPBの参加資格を得る)と、「本部」であるNPBから諸権利=フランチャイズ権(独占行使権)を付与されることになります。

     逆に、NPBに加盟している球団(加盟店)が、脱退や破産又はその恐れがあるときは、当該球団の参加資格及び諸権利(フランチャイズ権)は、その所属連盟の一時保有となり、新たな球団の保有者を連盟会長が捜し、斡旋する義務を負っています(協約36条、36条の2、57条、57条の2)。

     合併の場合は、被合併球団が参加資格を喪失することは、協約には明記されていませんが、必要により57条(連盟の応急措置)、57条の2(選手の応急措置)を準用するとされています。NPBに加盟している二以上の球団同士(2法人以上)が合併し、加盟球団が一になった場合、協約27条によりNPBから認められる参加資格は一であり、諸権利も一となりますから、被合併球団は参加資格を当然に喪失することになります。また、参加資格の合併がない以上、対等合併などは存在しません。

     合併の項である33条では、必要により57条(連盟の応急措置)、57条の2(選手の応急措置)を準用するとされていますが、球団数を削減する場合や新たな球団の参加がある場合を除けば準用は当然に必要であり、36条の2と同様に57条及び57条の2は準用しなければならないことになります。

     とすれば、5球団ではリーグ運営は難しいことははっきりしている訳であり、当初から球団数の削減を目的に合併したのでなければ、所属連盟であるパ・リーグは、大阪近鉄バファローズかオリックス・ブルーウェーブのどちらかの監督、コーチ、選手を一時保有し、パ・リーグ小池会長は、新たな球団保有者をさがしだし、斡旋しなければならないはずです。

     今回の合併劇の選手救済策など一時的なものです。80人に支配下選手を増やしても、コストがかかるだけですから、翌年には大リストラです。それも、1リーグ制にするならもう1球団減らさなければなりません。支配下選手の10人増では対応できません。

     今の体制のままで、否、ドラフトの廃止など、さらに状況が悪化する中での1リーグ10球団では、経済規模の小さい球団はこれまで以上に経営が苦しくなるだけです。これでは、10球団が8球団に減り、破滅への途を辿りかねません。

     今やることは、ひとつ、パ・リーグ会長は新たな球団の買い手を捜しだすこと。コミッショナーは36条の5及び6の廃止を含め新たな買い手が見つかるように特別措置を講ずること。球団及びセ・リーグはそれに協力することです。

     次は、プロ野球協約の目的でありかつ、日本プロ野球組織(NPB)を構成する団体及び個人が不断の努力を通じてこの目的達成を目指すものとされています(3条)。

    (1)わが国の野球を不朽の国技にし、野球が社会の文化的公共財となることによって、野球の権威および技術にたいする国民の信頼を確保する。
    (2)わが国におけるプロフェッショナル野球を飛躍的に発展させ、もって世界選手権を争う。
    (3)この組織に属する団体及び個人の利益を保護助長する。

     今回の合併劇も、この協約3条に則り処理されるべきです。


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