俺が好きなスポーツ by ダイスポ 日本スポーツ物語編

     スポーツ総合講座 〜その5〜 ラグビー・ワールドカップカウントダウン−2−


     ■連載第37回 「ラグビー・ワールドカップカウントダウン!」

    第6回 日本代表、いよいよ決戦の地へ 

     ■連載第39回 「ラグビー・ワールドカップカウントダウン!」

    第7回 日本代表、世界の強豪を相手に大健闘! 

     ■連載第41回 「ラグビー・ワールドカップカウントダウン!」

    第8回 日本代表、世界の強豪を相手に大健闘 その2 

     ■連載第43回 「ラグビー・ワールドカップカウントダウン!」

    第9回 世界の頂点目指して強豪激突 

     ■連載第45回 「ラグビー・ワールドカップカウントダウン!」

    第10回 ついに決勝戦! 


     連載第37回「ラグビー・ワールドカップカウントダウン!」 第6回 日本代表、いよいよ決戦の地へ


     皆さん、いよいよラグビー・ワールドカップも開催まであと1週間となりました。我らが日本代表も最後の沖縄合宿を打ち上げ、全ての準備を終了。いよいよ決戦の地、オーストラリアに向けて出発する事になりました。
     沖縄での合宿というのも、蒸し暑い試合会場となるタウンズビルを想定してのこと。日本が対戦するスコットランドは、湿気のある植物園の中で練習をしている映像が入ってきましたが、合宿を見学した日本ラグビー協会の真下昇専務理事は「チームの雰囲気は良くなっている。けがの心配もあったが、結果的にはトップリーグ2試合が彼らにとって良い影響を与えたのだと思う」と語っていたそうです。
     うーん、これはどうでしょうか?記念すべき開幕を迎えたラグビー・トップリーグですが、果たしてこのワールドカップ直前の時期に行うのが良かったのかどうか、今でも疑問です。何より貴重な代表での練習が、その間は出来なかったわけですから。真下理事がいみじくもおっしゃっていた「けがの心配もあったが、結果的には…」というのは、単なる結果オーライに過ぎないような気がします。まぁしかし、それでも気温40度(!)を超える猛暑の中、最後の追い込みをかけた選手にはやはりジャパンとしての誇りを少し感じる事が出来ました。いままでマスコミやファンの容赦ない批判を浴びてきた向井ジャパンですが、箕内キャプテンは「戦い方がチームに浸透したことを実感できた。本当に有意義な合宿だった」と沖縄合宿に手ごたえを感じたようです。私たちもこの言葉を信じて、ジャパンの大健闘を期待する事にしましょう。

     また30人の代表スコッドに、3名の追加メンバーが発表になっています。スクラムハーフの月田(リコー)などですが、これはメンバーの負傷時に追加される交代選手としての招集です。ジャパンは5日からオーストラリアに移動。6日にはタウンズビル入りし、最後の調整に入ります。
    ここで、ジャパンの試合スケジュールを確認しておきましょう。

    ・10/12(日)日本対スコットランド
    ・10/18(土)日本対フランス
    ・10/23(木)日本対フィジー

    この後シドニーに移動し、

    ・10月27(月)日本対アメリカ

     となります。

     やはり、改めて言うまでも無くスコットランドおよびフランスに、ジャパンが勝利を収める確率はかなり低いといわざるをえないでしょう。フランスには10回戦って11回勝てない相手(笑)なのですが、もし何か奇跡のようなものが起きるとすれば、それはスコットランドが暑さにへばってしまい、日本が金星を拾う事でしか無いと思います。私は宿沢監督のもと、平尾誠二主将率いるジャパンが、秩父宮でスコットランドを破る金星を生観戦しましたが、この日の東京も大変蒸し暑かったのを覚えています。
     そしてフィジーとアメリカですが、これもジャパンは不利が予想されています。出来れば、アメリカから1勝出来れば御の字…そんな弱気がつい出てきてしまいます。「大健闘を期待しよう」と言っておいてなんでそんな予想?といわれるかもしれませんが、これが世界のラグビーにおける日本代表の位置付け、現実だと思っていただけば良いでしょう。それに何より、日本にとってはきつい対戦スケジュールかもしれません。しかし日本戦以外にもフランス対フィジー、そしてフィジー対スコットランドなどこのグループには予選好カードが目白押し。これはもう、開幕が今から待ち遠しいですね。

     いかがでしたか。前回お伝えした注目選手をご紹介できなくてごめんなさい。選手に関しては、試合レポートの中で折に触れてご紹介していきたいと思います。そして次回は、いよいよワールドカップ開幕!日本代表試合レポートをお送りしたいと思いますので、どうぞお楽しみに。



    連載第39回「ラグビー・ワールドカップカウントダウン!」 第7回 日本代表、世界の強豪を相手に大健闘!


     様々な批判を浴びる形で決戦の地・オーストラリアに旅立った向井監督率いる日本代表。初戦の相手は、北半球の雄・スコットランドでした。苦戦が予想されたこの試合、私は15−50といった大敗を予想したのですが、我らがジャパンがいきなり見せてくれました。
     パワーの差を利して一気に突き崩しにかかるスコットランドに対し、日本は火の出るような激しいタックルを連発して相手の攻撃を封じ込め、容易にトライを取らせません。前半を終えて6−15と、接戦に持ち込む事に成功しました。会場を埋めたファンも、この予想外の健闘に日本をサポートし、日本にとってはますます有利な状況となっていきます。

     後半に入って向井監督は勝負に出ました。攻撃の基点であるハーフ陣を交代したのです。スクラムハーフ辻に代えて苑田、スタンドオフ廣瀬に代えて切り札ミラーを投入。この神戸製鋼コンビの登場により、日本にドラマチックな場面が生まれました。14分、ラインアウトから一気にバックスへ展開、最後はウィング小野澤がトライ!ジャパンにとってこれが今大会初トライとなり、これで得点は11−15と一気に4点差にまで詰め寄りました。まさか、ワールドカップの大舞台でスコットランドから金星をゲットすることが出来るのか?
     しかし、やはり世界の強豪はそう甘くはありませんでした。日本に疲れが見えた後半25分過ぎから試合終了までに一気に3トライを奪い、日本を突き放します。対照的に日本は、小野澤のトライ以降追加点を奪う事が出来ず、結局11−32で敗れました。ですが、スコットランド相手にも臆せず、自分たちの持てる力を全て出し尽くしたジャパンに、春先の悩める姿は見られず、逆に強豪相手に開き直って立ち向かっていく姿には清々しささえ感じましたね。スコットランド自身も、日本の捨て身のタックルにはかなり手を焼いていたようです。レッドパス主将は試合後「日本のタックルは素晴らしく、我々は度々パニックに陥ってしまった」と認めていました。

     こうして、今までの不振を一気に吹き飛ばすナイスゲームを見せてくれたジャパンに対するファンの期待は、一気に高まっていきました。しかし一難去ってまた一難、次はグループリーグ最大の強敵、フランスとの対戦が待ち受けていました。今大会優勝候補の一角に挙げられるフランス…大会前の私の予想は、10−70から90の惨敗でした。スコットランド相手には、10回戦えば1回は勝てるチャンスがあるかもしれません。でもフランスには、おそらく100回戦っても勝てるかどうか、という実力差があります。だから日本はこの試合には主力を温存し、残るフィジーとアメリカ戦に全力を投入したほうが良いのではないか、とまで考えていました。
     またフランスとしても、スコットランドに健闘した日本に対する警戒を強めておりました。唯一付けこむ隙があるとすれば、それは相手の油断であっただけに、日本の大健闘がかえって、フランスに対する勝利の確率を一段と下げる事になってしまった気がしたのですが…

     しかし日本は、スコットランド戦以上の気迫溢れる激しいプレーを見せ、攻撃的なタックルをビシビシと決めていきます。攻撃面でもコニアのトライ、フルバック栗原のゴールなどが決まり、前半を終えてなんと16−20。さらに後半早々にも栗原がペナルティ・ゴールを決めて、なんと19−20とその差1点にまで詰め寄ったのです。まったく予想外の展開に、異様などよめきに包まれるスタジアム。まさか、まさか日本がフランスに勝つのか?世界ラグビー史上最大の番狂わせ実現か?
     ところが日本は、やはり1試合を通じてフランスの攻撃を食い止める力は持っていませんでした。立て続けにトライを決められ、後半30分には22−44のダブルスコアを記録されてしまいます。しかし33分、遂に日本のエースウィング、大畑大介がトライ!最終的には駄目押しのトライを奪われ29−51で敗れましたが、この得点差以上に、日本の大健闘が光る素晴らしい内容のゲームとなりました。試合終了のホイッスルと共に、観客から惜しみの無い拍手を受けたのは、敗者・日本でした。まるで本拠地・秩父宮ラグビー場で試合をしているかのような熱狂的な応援を受けて、ジャパンが再び、世界の桧舞台へと踊り出る記念すべきゲームとなったと思います。日本だってフランスに勝てるかも知れない…ほんの一瞬でもそう思わせる事が出来た。そしてフランスはたっぷり冷や汗をかかされ、悲願のワールドカップ制覇への道のりがそう簡単ではない事を思い知らされたのです。

     こうして2戦2敗のジャパンは、1次リーグ突破が大変難しくなってしまいましたが、その内容は世界のラグビー関係者やファンを驚かせるだけの素晴らしいものでした。果たしてジャパンは、残るフィジーとアメリカから勝利を奪う事が出来たのでしょうか?(続く)



     連載第41回 「ラグビー・ワールドカップカウントダウン!」 第8回 日本代表、世界の強豪を相手に大健闘 その2


     スコットランドとフランス相手に、世界をあっと驚かせる大健闘を見せた向井監督率いる日本代表。しかしこの2試合を落とした事で、悲願の1次リーグ突破はかなり難しくなってしまいました。3試合目の相手はフィジー。太平洋に浮かぶ小さな島国のフィジーですが、ラグビーの世界では奔放かつ力強いラグビー「フィジアン・マジック」で知られています。また日本のトップリーグでも多くの選手がプレーしているため、ラグビー・ファンにとっては馴染みの深い国であると言えるでしょう。
     そんなフィジーを相手に日本は前半、攻撃の司令塔であるスタンドオフのアンドリュー・ミラーが芸術的なドロップゴールを決めると、トライも決めて、13-16と接戦に持ち込みました。しかし後半は疲れが出たのか、攻守に渡って運動量が落ち、フィジーが繰り出すパワフルかつスピーディーな攻撃の前に、あっという間に引き離されてしまいました。結局13−41と後半は1点も挙げる事が出来ず、日本は3連敗を喫してしまったのです。これで決勝トーナメント出場の望みは、完全に絶たれてしまいました。

     向井監督は「前半はゲームプラン通りに出来たが、後半はフィジーの長いキックとパワーに翻弄された。敵陣での反則が多く、チャンスをつかめなかった」と試合後にコメント。そしてハードスケジュールの中、日本の選手達の疲労は極限にまで達していたようです。勝てば疲れも癒される部分があるのかもしれませんが、健闘しても最後は引き離され、世界との差をまざまざと見せ付けられてしまう。これは大変な肉体的、心理的苦痛でありましょう。しかし、これこそがワールドカップです。残るアメリカ戦、絶対に勝利を挙げて日本に帰りたい、その気持ちだけでジャパンは最後の戦いに臨みました。
     このアメリカ、メジャーリーグをはじめとする野球やバスケットボール、そしてラグビーの兄弟分的存在であるアメリカン・フットボールなど、文字通り世界一のスポーツ大国として皆さんにとってもおなじみの国だと思いますが、このアメリカにおいては、ラグビーはかなりのマイナー・スポーツ。国民の関心も低く、ラグビーのワールドカップが開催されている事を知る人も少ないのが現状です。しかしアメリカ代表「イーグルス」は大型フォワードの突進力を生かした、パワフルな攻撃力が身上のチーム。疲れが見えるジャパンにとっては、最後にまたも過酷なゲームということになってしまいそうな相手でした。

     その通り、日本は試合の立ち上がりに2トライを奪われる苦しい立ち上がりとなってしまいます。しかし日本も栗原徹のトライをきっかけに反撃を開始!さらに栗原がペナルティ・ゴールも決めるなど、前半は10−20と後半に期待をもたせる形で折り返しました。後半、レフリーの要請でジャージーを紺色のものに着替えてフィールドに現れたジャパンでしたが、立ち上がりアメリカを追い詰めます。日本の頼れるキッカー、栗原が安定したゴールキックを立て続けに3本成功させ、19−20とその差1点にまで詰め寄ったのです。ここでトライを1本決め逆転すれば、そのまま試合の流れは一気にジャパンに傾く事が予想されました。

     最初に後半のトライを決めたのはアメリカでした。後半14分、フォワードの強い突進からシュバートのトライ、ゴールも決まり、19-27と引き離されてしまいました。しかしここで、ジャパンにも待望のトライが生まれます。決めたのは、やはりエース・大畑大介でした。栗原のコンバージョンキックも決まり、ジャパンは25-26とまたも1点差に詰め寄ったのです。頑張れジャパン!
     しかし、最後はまたしても力尽きてしまいました。終盤に駄目押しの2トライを奪われ、そのまま試合終了のホイッスル。日本は26-39と、アメリカを土壇場まで追い詰めながらまたしても敗れてしまいました。対照的にアメリカはこれで今大会初勝利、そしてワールドカップ史上嬉しい2勝目となりました。そしてこの2勝は、いずれも日本から挙げた勝ち星と言うことになったのです。向井監督は「悔しいが、選手たちはよくやってくれた。後半最後は疲れがでてしまった」とコメント。そして選手が豪州に入ってから本当に素晴らしいまとまりを見せてくれたこと、そして地元の人々が素晴らしいサポートと、熱狂的な声援をスタジアムで送ってくれた事に感謝の気持ちを述べていました。

     終わりました。勝つことが出来ませんでした。日本は、またしても世界の熱い壁を跳ね返す事が出来ず、4戦全敗で大会を終え、日本に帰国する事になってしまいました。残念です。しかし、ジャパンは本当に素晴らしい戦いを我々サポーターに見せてくれました。もちろんワールドカップには勝つために参加しているのですから、ただ善戦しただけではダメでしょう。それは日本代表のメンバーが一番良く分かっているはずです。願わくは、この悔しさを忘れないで欲しい。それはどういう意味か。日本代表の次回大会に向けての戦いは、もうこの瞬間にも始まっているという事です。日本が世界で戦い、勝つためには何が足りないのか。これから、2007年大会までの4年間、一体何をやらないといけないのか。それを真摯に反省し、解決策を見つけていかないといけないと思います。
     まずはトップリーグのレベルアップです。日本のラグビーはどうしても大学ラグビーの関心が高く、トップリーグの認知度がまだまだ低いと言われています。しかしまずはトップリーグでレベルの高い試合を見せて新たなファンを獲得し、スタジアムを満員にしないといけません。幸いこれからは、世界のスーパースター達がトップリーグでプレーする為にやってきます。Jリーグで世界のスター達とともにプレーした日本の選手達が力をつけていったように、日本のラガー達も彼らのプレーから多くのことを学ぶ事が必要でしょう。そして質量ともにハードなシーズンを毎年経験する事によって、世界の桧舞台に出ても全くひけを取る事のない、心身ともにタフな選手が多く生まれて欲しいと思います。もちろん、英国やフランスまた豪州など、海外リーグでプレーする日本人ラガーマンがたくさん出てきて欲しいものです。そしてユース年代の継続的な強化も欠かすことが出来ません。
     その上で新しい日本代表監督が率いるジャパンは、より精力的に国際試合を多くこなす事が大事になってくるでしょう。
     さぁこれからも、皆さんが日本代表の試合に注目し、スタジアムで、そしてテレビの前でジャパンに声援を送ってください。日本のラグビーは、必ず力強く蘇ります!

     次回は、決勝トーナメントに勝ち上がった強豪各国の戦いを振り返っていきたいと思います。どうぞお楽しみに。



     連載第43回「ラグビー・ワールドカップカウントダウン!」 第9回 世界の頂点目指して強豪激突


     激しい1次リーグを勝ち抜いて、決勝トーナメントに勝ち上がった8カ国は以下の通りでした。

     イングランド、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、ウェールズ、スコットランド、アイルランド、フランス

     南米の強豪アルゼンチンや、フィジー、そしてサモアといった国々も健闘しましたが、残念ながら勝ち上がることは出来ず、長年世界のラグビー界をリードしてきた伝統国がずらりベスト8に残りました。ラグビーはサッカーに比べると番狂わせも少なく、どうしても強豪が順当に勝ちあがってくる事が多いですね。

     そして準々決勝のカードは、豪州ワラビーズ対スコットランド、NZオールブラックス対南アスプリングボクス、フランス対アイルランド、そしてイングランド対ウェールズの組み合わせとなりました。
     地元ワラビーズは、地力に優るスコットランド相手に前半こそ同点で折り返したものの、後半は3本のトライを挙げて突き放し、結局最後は33−16の勝利を収めました。しかし決して満足な試合内容という訳ではなく、ベスト4に残ってもどこか物足りなさが残ったのは事実です。次にフランスは1次リーグで日本にやや苦戦しましたが、そこはやはり優勝候補の一角、アイルランド相手に43−21と快勝しています。フランスは第1回大会(1987)そして第4回大会(1999)と決勝に進出し素晴らしい内容のラグビーを披露していますが、優勝にはこれまで縁が無かっただけに、今回こそは…の思いが人一倍強いでしょう。

     また今大会最高のスーパースター、ジョニー・ウィルキンソンを擁するイングランドは宿敵ウェールズと対戦。何時もはロンドン、あるいはカーディフで「6カ国対抗」としてテストマッチを行う両チームですが、今回は遠く離れた南半球での対戦となりました。ウェールズはかつて南半球の雄として君臨し、多くの優れた名選手を輩出。近年はやや低迷が目立っていますが、1次リーグではオールブラックス相手に大健闘するなど、かつてのラグビー王国のプライドを見せてくれました。そして現在世界最強、優勝候補最右翼といわれるイングランド相手にも、その闘志は少しも衰える事を知りませんでした。イングランドは自慢の強力フォワードで前進し、最後は名キッカー・ウィルキンソンの正確無比なキックで得点を狙いますが、ウェールズは的確な守備を見せて失点を許しません。逆に見事なつなぎのラグビーからトライを奪い、前半を10−3とリードして折り返したのです。よもやイングランドが、ベスト8で姿を消す大番狂わせが見られるのか?

     だが後半は、やはりイングランドの強さが目立ちました。フォワードが確実に前進し陣地を進めると、後は自慢のバックス陣がフィールドを駆け巡ります。最後はウィルキンソンが落ち着いてゴールキックを決める磐石の展開で、終わってみれば28−17と実力どおりの結果になり、イングランドがベスト4に進みました。しかしウェールズの予想外の健闘にやや慌てたのか、ミスが目立ったのも事実でした。逆にウェールズはイングランド相手に3トライを奪っただけに勝ちたかったと思いますが、やはりそこは横綱と小結くらいの差がある両国、善戦を超える何かが足りなかったのかも知れません。ともあれ、今大会のウェールズは胸を張って良い、素晴らしい内容の試合を見せてくれたと思います。

     そして最後は、オールブラックスとスプリングボクスの対決です。かつては世界最強の座をほしいままにしたスプリングボクス。国際舞台に復帰後も第3回大会(1995年)で優勝するなど、南ア健在を見せてきましたが、ここ数年はややその力にかげりが見えてきています。オールブラックス相手に意地を見せたいところでした。だが終わってみれば、NZが29−9の圧勝。前半は13−6とスコアの上では南アもかなり健闘していますが、内容ではオールブラックスの危なげない展開。選手個人の能力で優るうえに攻守共にスキが無く、ボールを圧倒的に支配しつづけます。結局南アはNZの圧力に押されたまま、1本のトライも奪う事が出来ず、今大会から姿を消す事になってしまったのです。強豪再建への道のりは、まだまだ険しい、そんな寂しい印象を残す事になりました。せめて闘志だけでも、オールブラックスを上回って欲しかったのですが、いろんな意味で残念な悔いの残る試合だったと思います。

     さて、ベスト4が出揃いました。北半球の2強、イングランドとフランス。そしてこの20年間、世界のラグビーを支配し続けてきたニュージーランドと豪州という、まさに大本命がズラリ顔を揃え、それぞれ激突することになったのです。好ゲーム必至の準決勝2試合ですが、私が戦前に立てた予想ではイングランドと、そしてオールブラックスの決勝進出でした。この両チームが出てこそ本当の意味でのファイナルであり、そして必ず両国が勝ちあがってくると確信していたのです。ではその結果は?これは来月に持ち越しという事にいたしましょう。次回はいよいよ「ラグビー・ワールドカップカウントダウン!」も最終回。準決勝・決勝のダイジェストと、そして大会の総括を行いたいと思いますので、どうぞお楽しみに。



     連載第45回「ラグビー・ワールドカップカウントダウン!」 第10回 ついに決勝戦!


     熱戦が繰り広げられてきたラグビーW杯も、いよいよ目指すベスト4が出揃いました。北半球最大のライバル、イングランドとフランス。そして南半球の、いや世界のラグビーを支配し続けてきたニュージーランドと豪州という大本命のチームが顔を揃え、激突することになったのです。この準決勝を勝ち上がったチームこそが南北半球の真の王者となり、世界一の座へ挑戦する事を許されるようになります。

     前回も書きましたように、私が立てた予想はイングランドと、そしてNZオールブラックスの決勝進出でした。この両チームが出てこそ本当の意味でのファイナルであり、そして必ず揃って勝ちあがってくると確信していたのです。
     まずNZと、豪州ワラビーズの対戦が行われました。前半10分にラインアウトからオールブラックスの司令塔、スタンドオフのカルロス・スペンサーがオープンに展開、飛ばしパスを放ります。ところがこのパスを、ワラビーズのスターリング・モートロックが飛び出してインターセプト!自陣からのカウンターアタックとなりましたが、75mの距離を一気に独走し歓喜のトライ。まずはワラビーズが先制しました。

     このセンセーショナルなトライにより、オールブラックスには動揺が走ります。逆にそのまま前半をリードして折り返したワラビーズは、ホームでの大声援も手伝って試合を優位に展開。結局最後まで相手に付け入る隙を与えず、終盤の反撃も振り切って22−10で「番狂わせ」を演じたのです。
     もちろんワラビーズは開催国であり、また前回王者でもあるわけですから「番狂わせ」という表現は相応しくないかも知れません。しかしNZ有利が伝えられる中、この完勝は本当に意外でした。相手の攻撃を研究して組織なディフェンスを見せ、そして一瞬のスキをついたトライで試合を一気に優位に持って行ったあたり、この試合に賭けた豪州の意地が生んだ、まさに執念の勝利だと言えるでしょう。逆にオールブラックスとしては何時もの迫力が殆ど感じられず、寂しいベスト4敗退に終わってしまいました。今回もまた、世界の頂点に立つことは叶わなかったのです。

     ではイングランドvsフランスはどうだったでしょうか。雨の中行われた準決勝第2試合は、結果からいえばイングランドの快勝でした。得点は24-7。しかしイングランドは、得点全てがジョニー・ウィルキンソンの「スーパーブーツ」が生み出したものだったのです。相手が反則を犯せばペナルティ・ゴール、そして敵陣に攻め込んでいけばドロップゴールと、トライは取れなくても着実に得点を重ねていきます。イングランドは決して面白みこそありませんが固い試合運びで、後半に入るとフランスに得点を許しません。フランスにとっては雨も響きましたが、結局ウィルキンソンを最後まで捕らえきる事が出来ず、あっさり勝負はついてしまいました。

     というわけで、決勝はイングランドと豪州の対戦に決まりました。これは第2回大会のファイナルと同じ組み合わせです。1991年、ロンドンのトゥイッケナム競技場では「アウぇー」のワラビーズがイングランドを破りましたが、今回は豪州の「ホーム」。イングランドはリベンジを果たす事が出来るでしょうか?ちなみに私の予想はイングランドの優勝でした。本命の一角であるオールブラックスが出ない以上、たとえ敵地といえどもイングランドが勝たないわけにはいきません。それにワラビーズは準決勝がベストの内容であり、これ以上の上積みは望めないと予想したのがその根拠でした。
     先制したのは豪州でした。試合開始早々、ラグビーリーグのスターだったウィングのトゥキリが自陣ゴールライン前に上がったパントをキャッチ、そのままトライを挙げたのです。しかしイングランドも反撃、前半終了間際にはイングランド最大のスピードスター、やはりリーグ出身のジェイソン・ロビンソンがトライを挙げ、イングランドが14−5とリードして折り返しました。だが後半に入るとワラビーズも必死の反撃を開始。そして試合終了間際には豪州のエルトン・フラットリーが劇的な同点ゴールを決め、遂に試合は延長戦に突入しました。この大死闘を制するのは豪州か?イングランドか?
     やはり最後は、ウィルキンソンでした。延長後半終了間際、ラグビー母国イングランド国民の夢と期待を乗せたボールがゴールへ飛んでいく。ボールはゴールポストの間を通過していきました。決まった!フィールド上では選手の、そしてスタンドでは遠い国からやって来たサポーターの歓喜が爆発する。試合終了のホイッスル。北半球の国が、初めて世界を制した劇的な瞬間でした。

     こうしてワールドカップ史上、いや世界のラグビー史上に残る名勝負は終わりました。ラグビーの世界一決定戦に相応しい、最高のゲームだったと思います。イングランドは遂に世界の頂点へ上り詰めました。そして母国に凱旋した選手達を、国民は熱狂的に出迎えたのです。確かにイングランドの試合運びは決してエキサイティングといえる物ではなく、批判もあったでしょう。だがワールドカップは面白いラグビーを見せる場ではなく、何が何でも勝たないといけない真剣勝負の舞台です。だから私は、イングランドの勝利を素直に褒め称えたいと思います。

     長い長い戦いがようやく終わりました。ワールドカップは大成功に終わりました。今までサッカーの日陰的存在だったラグビーですが、21世紀に入り最初のW杯が素晴らしい大会に終わった事で、未来には明るい展望が開けています。そして2007年のフランス大会では、是非ジャパンの勝利を見てみたいと思います。皆さんも今後は海外のラグビー試合を是非、ご覧になっていただきたいと思います。そしてこの4年間で国際ラグビーの知識を充分に身につけられ、4年後の次回大会を是非存分に堪能されることを期待して、今回の「ラグビー・ワールドカップカウントダウン」の連載を締めくくりたいと思います。皆様、本当に今までありがとうございました。


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