俺が好きなスポーツ by ダイスポ 現代USスポーツ人名録

     現代USスポーツ人名録 〜その5〜(連載第65回〜67回+番外編)


     ■現代USスポーツ人名録 第16回 サッカー米国代表 その1
     ■現代USスポーツ人名録 第17回 サッカー米国代表 その2
     ■現代USスポーツ人名録 第18回 マーブ・アルバート(スポーツアナウンサー)
     ■現代USスポーツ人名録 番外編・おかしな二人



     連載第65回
     現代USスポーツ人名録 第16回 サッカー米国代表 その1


     スポーツを愛する皆様、ご機嫌いかがでしょうか。
     アメリカのスポーツ界を代表する選手やコーチを紹介しております「現代USスポーツ人名録」。今月はその16回目です。


     いよいよ来年(2006年)に迫った、サッカー界最大の祭典、ワールドカップ(W杯)ドイツ大会。開催国のドイツをはじめ、前回2002年大会の共同開催国だった日本と韓国も、既にアジア予選を勝ち抜いて本大会への出場を決めています。しかし、本連載はアメリカのスポーツ界について語るのが目的ですから、アジアのサッカーについては述べません。今日の主役は、アメリカ代表です。


     野球やバスケットボールなどのメジャースポーツと比べると、どうしてもマイナーなイメージがつきまとうアメリカのサッカー。国内リーグであるMLS(メジャーリーグ・サッカー)も健闘しておりますが、まだまだ話題性ではNFLやMLBに及びません。「サッカー不毛の地」などという、米国につけられたありがたくないニックネームも、完全に消し去ることが出来たというわけではないでしょう。
     それでも代表チームは近年、目覚しい進歩と躍進を遂げており、1990年のイタリアW杯以来、既に4大会連続で本大会出場を果たしています。開催国としての出場だった1994年のアメリカ大会ではベスト16まで進出し、そして日韓大会では、日本よりもひとつ上のベスト8まで駒を進める健闘を見せました。
     グループリーグでは、世界の強豪を破ってベスト4へ食い込んだ韓国とも対戦し、圧倒的なアウェーという厳しい状況にもかかわらず1対1で引き分け。また優勝候補の一角に挙げられていた、欧州の強豪であるポルトガルを破るという快挙も果たしています。準々決勝ではドイツと対戦、0−1と完封負けを喫しましたが、予想を上回るその健闘ぶりが大いに称賛されました。スーパースター不在、見ていても決してエキサイティングではない組織的サッカー、という批判も浴びがちなアメリカですが、ワールドカップ以後もその強さをキープ。現在のFIFA世界ランキングは、トップ10の一角を占める7位にまで上昇しています。


     このように、アメリカ代表チームはW杯出場の常連国であり、いまや世界の強豪への仲間入りを狙う位置にまで上り詰めてきた、といっても決して過言ではありません。その代表チームの指揮を1998年以来取っているのが、ブルース・アリーナ監督。就任以来8年目を迎えるアリーナ率いるアメリカは、今大会予選でも順調に勝ち進み、北中米カリブ海地区最終予選へと駒を進めてきました。今回、北中米に与えられた枠は「3.5」。最終予選にまで進んだ6カ国のうち、上位3カ国は無条件でドイツへの切符を与えられます。また4位チームに関しても、アジアの5位とプレーオフを行い、勝てば本大会への出場切符を得ることになっています。
     欧州や南米などに比べ、どうしても全体のレベルが落ちる地区だけに、「こんなに楽な予選では、アメリカ辺りはほとんどフリーで本大会へ進めるじゃないか」などといった、やっかみや羨望の声も他地区のサッカーファンから聞こえてきそうです。


     最終予選(ステージ3)進出を果たしたのは、アメリカ、メキシコ、コスタリカ、トリニダード・トバゴ、グァテマラ、そしてパナマの6カ国。その中心的存在といえるのは、やはりアメリカと、そして中米サッカー界の雄・メキシコです。
     メキシコは、日韓大会でも1次リーグを突破し、決勝トーナメント1回戦で米国と対決。この時は、0対2でアメリカが勝利を収めていますが、それでもメキシコの強さ自体は、世界でも折り紙付きです。特に11万人を収容する、メキシコシティのアステカ・スタジアムでは、熱狂的なファンの声援が相手チームに対し、大きなプレッシャーとなってのしかかってきます。今年の3月に同スタジアムで行われたアメリカとの対戦でも、メキシコはホームにおける圧倒的な強さを発揮。反撃を振り切り、2対1のスコアで宿命のライバル相手に、快勝を収めました。一方、敗れた米国にとっては、本大会予選における初黒星ということになってしまったのです。


     それでも大方の予想通り、アメリカはすぐに立ち直って再び快進撃を開始。8月17日にコネチカット州ハートフォードで行われたトリニダード・トバゴ戦では、試合序盤に挙げた1点を守りきり、1対0で勝利を収めました。そして各国とも6試合が終了した時点で、メキシコとアメリカがやはり首位を争う展開になりました。


     その後今月に入ってから、アウェーで宿敵に敗れたアメリカにとっては、またとない名誉回復の機会がやってきました。9月3日、オハイオ州コロンバスのクルー・スタジアムで、メキシコとのリターン・マッチが行われたのです。
     アメリカにとっても、そしてメキシコにとっても、ここで本大会出場を決めることの出来る重要な一戦。このビッグマッチに、スタジアムは24,685人と満員の観衆で埋まりました。さぁアメリカは、正念場とも言うべきゲームに勝利を収めて、5回連続8回目の本大会出場を決めることが出来たのでしょうか。ドイツ切符を先に手にしたのは、アメリカか、それともメキシコか?


     しかし、お時間が参りました。詳しいゲームの内容については、また来月にお話するとしましょう。


     いかがでしたか。米国代表の素晴らしいプレーについて、もっともっとお話したいところではありますが、

     ♪あまり長いは皆さんお飽き ちょいとここらで変わり〜まぁす〜

     それでは、また来月!



     連載第66回
     現代USスポーツ人名録 第17回 サッカー米国代表 その2


     スポーツを愛する皆様、ご機嫌いかがでしょうか。
     アメリカのスポーツ界を代表する選手やコーチを紹介しております「現代USスポーツ人名録」。今月はその17回目です。
     今月も前回に引き続き、来年ドイツで行われるサッカーの祭典、ワールドカップへの出場を目指すアメリカ代表についてとりあげてみたいと思います。


     ブルース・アリーナ監督率いるアメリカ代表は、ワールドカップ北中米カリブ海地区最終予選へ進出。そしてオハイオ州コロンバスに宿敵メキシコ代表を迎えて、9月3日に運命の直接対決を行いました。この試合に勝てば、アメリカはドイツへの切符を勝ち取ることが出来ます。アウェーでの対戦では既に苦杯をなめていただけに、いろんな意味でこの試合が、今予選における最大のヤマ場となることは間違いありませんでした。


     アメリカの布陣は、GKに欧州でのプレー経験も豊富な、ベテランのケーシー・ケラー。攻撃陣には、オランダリーグの強豪PSVでプレーするダマーカス・ビーズリーや、エースのランドン・ドノバンなど、若く才能溢れるアタッカーを置いて決戦に臨みました。
     前半は、比較的静かな立ち上がり。序盤にキャプテンのクラウディオ・レイナがFKから、そしてドノバンが左サイドからクロスを上げてきますがタイミングが合わず、決定的なチャンスとはなりませんでした。


     こう着状態のまま迎えた20分、レイナのシュートがメキシコのゴールを襲いますが、力が無くGKオズワルド・サンチェスが難なくキャッチ。この時間帯から、ホームでの大声援を受けたアメリカが、ビーズリーの突破を足がかりにチャンスを掴むなど、少しずつ攻撃にリズムが出てきました。だが24分、レイナが相手へのファウルにより、イエローカードを受けてしまいます。大黒柱のレイナは、警告累積で次の試合が欠場停止となり、ますますこの試合が重要なものとなりました。


     そのままハーフタイムかと思われた前半のロスタイム、アメリカに思わぬ試練の時が訪れました。不用意なファウルにより、ペナルティエリアの手前でFKを与えてしまいます。メキシコのキッカー、ラモン・モラレスが壁の横を抜くフリーキックを放ちましたが、このボールをケラーが横っ飛びでセーブ!続いてコーナーキックとなりますがアメリカはこれも凌ぎ、そのままレフリーのホイッスルが鳴って前半終了となりました。最後のプレーで危うく失点を喫するところでしたが、ケラーの集中力がゴールを防いだといえるでしょう。試合会場となったクルー・スタジアムのスタンドを埋めた24,685人の観衆も、思わず肝を冷やしたに違いありません。しかし結局は0−0と、宿命のライバルが一歩も譲らず、激しい意地のぶつかり合いとなった最初の45分でした。


     ハーフタイムのあと、雌雄を決する後半がキックオフ。そしてアメリカに、いきなり歓喜のときがやってきました。53分、右サイドでFKを得てエディ・ルイスがクロスを上げると、ペナルティ・エリア内での競り合いからDFのオニェウがヘディングシュートを放ちますが、ポストに当たります。その跳ね返ってきた球を、ゴール前へ詰めていたスティーブ・ラルストンが押し込んで、アメリカは待望の先制点を挙げることに成功しました。
     おなじみの「USA!USA!」コールで、一気にヒートアップする米国サポーター。この声援に後押しされるかのように、アメリカはまたも58分にコーナーキックのチャンスを得ました。そして素早いリスタートから、ビーズリーがゴール前でフリーになってシュート!相手守備の、一瞬の混乱を衝いたアメリカの思わぬ追加点に、スタンドは先取点の時を超える熱狂に包まれました。


     セットプレーから、短い時間帯にまさかの2失点を許したメキシコは、このあと攻勢に出ますが、アメリカはケラーを中心とした手堅いディフェンスでゴールラインを割らせず、決定的なチャンスを作らせません。一方メキシコ側からは焦りからか、ラフなプレーが飛び出してビーズリーが倒してしまう場面も目立ちました。
     そして時間だけが過ぎていき、ついにロスタイムへ。アメリカ側はビーズリーがGKと1対1になりますが、この決定的な場面でシュートを外してしまい、ダメ押し点を挙げることが出来ませんでしたが、今のアメリカ代表チームには、もう2点で十分でした。そのまま試合終了のホイッスルが鳴り響き、アメリカは5大会連続でのワールドカップ出場を決めたのです。
     喜びを爆発させる選手達。ドノバンらは、体に星条旗を巻きつけて抱き合い喜びを表すと、客席でも多くの星条旗が打ち振られました。スタジアムの外では、予選突破を祝福する打ち上げ花火。そして歓喜の「USA!USA!」コールが、何時までも止むことはありませんでした。


     見事な完封勝利を収めたケラーは、この試合で区切りとなる代表通算50勝目をマークしています。世界的なビッグネームこそいませんが、整備されたディフェンスと組織的な米国サッカーは健在で、予選を通じてグレードの高い試合を展開していたと思います。アリーナ監督の手腕についても、まずは高い評価を与えて良いでしょう。来年の本大会では、どんな国との対戦でもぶざまな試合をすることは無いように思われます(またメキシコも、このあとの試合で本大会への出場を決めたことを付け加えておきましょう)。


     ただ、これだけの素晴らしい代表チームを有しながらも、米国内では相変わらずサッカーに対する関心が高いとはいえません。
     日本でなら、ワールドカップ予選のみならず代表戦は大きな関心を集め、ホームでもアウェーでも地上波放送されることでしょう。だがアメリカではこの試合でも4大ネットワーク局で放送...と言う事は無く、スポーツ専門ケーブル局のESPN、しかも通常では過去のスポーツ番組などを中継している「ESPNクラシック」で特別に放送されたというところに、アメリカ代表の持つ悩みが如実に現れていると思います。ただ、来年のW杯はESPN(1、2)と、4大ネットワークのひとつABCでも放送されるようですので、アメリカが日韓大会同様勝ち進んで、多くのスポーツファンにサッカーに対する関心を持ってもらいたいと願っています。


     なおこの「現代USスポーツ人名録」では来年も、アメリカ代表の戦いぶりや大会前の情報などを特別企画、という形で短期集中連載していきたいと思いますので、どうぞご愛読いただきますよう、よろしくお願いします。


     いかがでしたか。米国代表の素晴らしいプレーについて、もっともっとお話したいところではありますが、

     ♪あまり長いは皆さんお飽き ちょいとここらで変わり〜まぁす〜

     それでは、また来月!



     連載第67回
     現代USスポーツ人名録 第18回 マーブ・アルバート(スポーツアナウンサー)


     スポーツを愛する皆様、ご機嫌いかがでしょうか。
     アメリカのスポーツ界を代表する選手やコーチを紹介しております「現代USスポーツ人名録」。今月はその18回目です。


     今年のメジャーリーグは、シカゴ・ホワイトソックスのワールドシリーズ優勝という劇的な結末で幕を閉じました。でも、一年を通じてスポーツ観戦を楽しめるのが、アメリカの凄いところ。野球がフィナーレを迎える頃から、バスケットボールやアイスホッケーといった、他のプロスポーツが開幕を迎えます。そしてプロバスケットボールの頂点が、いわずと知れたNBA。1980〜90年代にかけて、マイケル・ジョーダンやマジック・ジョンソンらの活躍で黄金時代を迎えたNBAは、現在では海外からの有力選手を多く抱える国際的なプロリーグに発展しました。


     そのNBAの中でも、ここニューヨーク地区に本拠地を置くのが、ニューヨーク・ニックスとニュージャージー・ネッツの2球団。それぞれ熱狂的なファンを抱える両チームと密接な関係を持っているのが、今回ご紹介するマーブ・アルバートです。
     アルバートは30年以上にわたってニックスの実況アナウンサーを務め、地元ファンの間ではたいへんお馴染みの存在でした。そして今年からは、『YESネットワーク』というケーブルテレビ局で、ネッツ戦のアナウンスを担当するようになったのです。
     実況アナのことを「プレー・バイ・プレー」と呼びますが、アルバートはこのプレー・バイ・プレーの第一人者として、テレビやラジオなどの世界で確固たる地位を築き上げてきた人です。特にニューヨークでは、彼の声と顔を知らないバスケットボールファン、いやスポーツファンは殆どいないでしょう。NYのスポーツメディアにおけるシンボル的存在、それがアルバートだといっても過言ではありません。


     1941年にブルックリンで生まれたアルバートは、シラキュース大学に在籍した後、1965年にニューヨーク大学を卒業。伝説的スポーツ実況アナだったマーティ・グリックマンに師事、若くして頭角を現すと、1967年にはニックスの実況アナに就任しました。しかしその4年前、1963年にアルバートは既にニックスの試合を中継したことがありました。それは、当時のニックス戦担当者だったグリックマンがパリから帰国する際、”吹雪に見舞われた”という理由でニューヨークへ戻ることが出来なくなり、若手だったアルバートに急遽、白羽の矢が立ったとか。その時の事についてアルバートは「彼は、僕に実況の機会を与えてくれたんじゃないかな。あるいは、単にその試合を担当したくなかったのかもしれないね」と、インタビューでコメントしています。


     それはともかくアルバートは、1970年にはリーグ優勝を達成したニックスの実況を担当。またバスケットボールのみならず、ニックスと同じくマジソン・スクエアガーデンに本拠地を置くNHLの古豪ニューヨーク・レンジャーズやNFLの中継も担当するなど、スポーツアナウンサーとして人も羨むような王道を歩んでいきます。さらにローカル放送だけではなく、NBAの全国中継を担当していた4大ネットワーク局のひとつNBCにおいても、アルバートの張りのある声を聴くことが出来ました。該博な知識と、スポーツに対する情熱に支えられた実況で多くのファンを獲得し、まさにニューヨークにおける花形アナウンサーの座を長きにわたって獲得していたのです。そして1997年には、バスケットボールの殿堂から表彰を受け、メディア関係者としては最大の栄誉に浴したのでした。


     だが、同じ1997年、突如として降りかかった大変ショッキングなセックス・スキャンダルにより、アルバートはいったん、実況アナウンサーの職を奪われることになりました。そして裁判沙汰にまで発展し、メディアのセンセーショナルな報道にもさらされてしまいます。エミー賞受賞など、数え切れない幾多の表彰を受けながらも、栄光の座から堕ちてしまったアルバート。だが、その後は少しずつスポーツメディアの世界で復活をとげ、2001年にはNBCにも復帰を果たしました。かつてのように、お茶の間にその声が聴かれるようになったのです。なんだかんだ言っても、彼はスポーツの世界にとってかけがえのない存在だったのですね。また1998年には再婚するなど、私生活の面でも落ち着きを取り戻していったようです。


     しかし2004年、再び試練の時が訪れました。アルバートは中継の中で、低迷を続ける現在のニックスを批判しました。かつての黄金時代を、文字通り身をもって知るアルバートにとっては、現在の不甲斐ないチームの状況は見るに耐えないものだったのでしょう。局側からの批判を止めるようにとの要請にも応じず、面目を失った形のニックス側と、ニックス戦を放送する地元テレビ局は、最終的にアルバートを実況アナの座から外しました。こうして、チームとアルバートが築き上げていた36年に渡る長い関係に、遂に終止符が打たれてしまいました。
     NBAを全国放送するケーブル局の一つであるTNTでは、引き続きNBAの中継を担当していたものの、地元の試合中継ではもう、アルバートの声が聴けなくなってしまうのか...しかし、ハドソン川を隔てたニックスのライバル的存在であるネッツが、2005年に入ってアルバートと契約。春から秋にかけてはヤンキースの試合を中継しているYESで、アルバートは50試合に渡ってネッツ戦の中継を担当することになりました。窮地に陥っても何度でも復活してくるところに、その底知れない実力が伺えます。


     アルバートの実況スタイル、語り口は非常に特徴的であり、しかも分かりやすく、一度聴いたら忘れられないような強い印象を視聴者に対して与えてくれます。バスケットボールというスポーツは攻守がめまぐるしく入れ替わり、実況が非常に難しい競技のひとつだと思うのですが、アルバートは聞き取りやすい、比較的ゆったりとした語り口で我々視聴者に語りかけてくれます。それでいて必要な情報はしっかりと盛り込まれているわけですから、これはもう長い経験に裏打ちされた一種の職人芸のようなものでしょう。
     そんな彼の口癖、おなじみのフレーズは「YES!」。芸術品のようなシュートが決まった瞬間、誰もが思わず口走ってしまう台詞ですが、アルバートの代名詞としてあまりにも有名です。


     今年64歳を迎えたアルバート。彼の兄弟達もバスケやボクシングなどのスポーツアナとして活躍しており、さらに、息子のケニーもまたアナウンサーとしてFOXなどで活躍、まさにスポーツ中継のサラブレッド一家、といっても過言ではありません。これからも、ニューヨークをはじめとするアメリカのスポーツファンに親しまれる存在であり続けることでしょう。


     いかがでしたか。アルバートの素晴らしい実況について、もっともっとお話したいところではありますが、

     ♪あまり長いは皆さんお飽き ちょいとここらで変わり〜まぁす〜

     それでは、また来月!



     現代USスポーツ人名録 番外編・おかしな二人


     スポーツを愛する皆様、ご機嫌いかがでしょうか。
     アメリカのスポーツ界を代表する選手やコーチを紹介しております「現代USスポーツ人名録」。今月はその番外編です。


     寒い2月もようやく終わりましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。ニューヨークでは、テレビを付ければNBCがトリノ冬季五輪を連日放送し、主としてアメリカ勢の活躍を伝えていたのですが、そんな中、私はスポーツに背を向けてブロードウェイへと向かいました。ニール・サイモンが書いたクラシック・コメディ「The Odd Couple(邦題・おかしな二人)」を、ブルックス・アトキンソン劇場で見るためです。
     「おかしな二人」はもともと、1965年にやはりでブロードウェイで大ヒットを飛ばした、同名の作品の再舞台化です。大評判を取った同作品はその後、芝居のみならず、ジャック・レモン、ウォルター・マッソー主演で1968年に映画化されてヒット。さらに、1970年代にはテレビのシットコム(シチュエーション・コメディ)としても制作され、こちらも息の長いシリーズとして人々に愛されてきました。日本でも翻訳されて、何度か舞台化されているようです。
     そして今回は、マシュー・ブロデリックとネイサン・レーンという、ミュージカル『プロデューサーズ』の名コンビが再び共演するということで評判になり、実際の公演が始まる前からアッという前にチケットが売れてしまいました。私も、演劇などは日頃見に行かない人間ですけど、この「おかしな二人」はもともと大好きな作品ですので、一度見ておこう、という気になり、ちょっと無理してチケットを購入しました。


     ではこの「おかしな二人」のあらすじを簡単に紹介しておきましょう。
     舞台は、1960年代のニューヨーク。妻に逃げられた、無精者のスポーツ記者オスカー(レーン)は、自宅のアパートで仲間とポーカーに興じている。そこへ、やはり妻に三行半をたたきつけられたフィリックス(ブロデリック)が、すっかり落ち込んだ姿で現れた。行くところが無くなったフィリックスは、オスカーの部屋で同居生活を始めるが、潔癖症であるフィリックスがズボラなオスカーと合うはずも無く、二人は事あるごとに喧嘩を始める...といったものです。部屋の掃除なんか全くしない、服は脱ぎっ放しでゴミも散らかしっ放しのオスカーと、チリ一つ無くなるまで、徹底的に掃除をしないと気がすまない几帳面なフィリックスの、まったく奇妙な同居生活。両極端な性格の二人が繰り広げるドタバタと、ウィットに富んだ都会的会話が「おかしな二人」のオモシロさを倍増させていると言えるでしょう。


     さて、ニューヨークが舞台となっているからかどうかは分かりませんが、TVシリーズ版の「おかしな二人」は、地元のテレビ局で深夜に繰り返し再放送されています。ある局で放送が終われば、今度はまた別のテレビ局で放送が開始される...といった形で、平日なら深夜、眠れなくてテレビのスイッチを付けると、たいていは見られるようになっているのです。
     そして私は映画やお芝居よりも、まずこのテレビ版を通じて「おかしな二人」の魅力に触れました。
     テレビ版に出演しているのは、トニー・ランドールとジャック・クラグマンという芸達者のベテラン俳優二人です。フィリックスを演じたランドールは2004年に惜しくもこの世を去りましたが、名作映画「12人の怒れる男」「酒とバラの日々」などにも出演したクラグマンは、83歳の今も健在です。そして昨年、ランドールとの思い出を書いたメモワール「トニーと私Tony and Me」を執筆、出版しました。


     テレビ版の「おかしな二人」では、ランドール演じるフィリックスの職業はカメラマンとなっているんですが、オスカーは芝居と同様に、ニューヨークの新聞社でコラムを執筆しているスポーツライター、という設定になっています。そしてシリーズ後半では、同作品を放映していたABCネットワークのドル箱番組『マンデーナイト・フットボール(MNF)』の臨時解説者として登場する、などという回もありました。このエピソードでは、同じテレビ局の番組である強みを生かして、当時「MNF」の実況を担当していた伝説のスポーツアナ、ハワード・コッセルも本人役でゲスト出演しています。直接スポーツとは関係のないドラマですが、このように米国スポーツマニアならいろいろ見逃せない設定も、たまに登場するようになっています。このコッセルに関してましては、いずれ本連載でも詳しく取り上げて行きたいと考えておりますので、どうぞご期待ください。


     さて、ブロードウェイで再演された「おかしな二人」ですが、確かにブロデリック&レーンの名コンビは息もピッタリで、それなりに面白い芝居を最後まで見せてくれたのですが、やはり私は、ランドール&クラグマンのテレビ版での印象が強いだけに、全体的にもうちょっと演技を練りこんで行って欲しいな、という印象を持ちました。
     ただ、私自身は、どちらかと言えばオスカーに近いタイプのズボラな人間ですので、どうしてもオスカーのものぐさぶりに目が行ってしまいがちですが、この点ではネイサン・レーンはなかなか健闘している、と思いました。


     と言う事で、つかの間の芝居見物は今月限り。次回からはまた、米国スポーツ界を代表する選手やコーチを紹介する、本連載本来の姿に戻りたいと思いますので、よろしくお願いします。


     ※現代USスポーツ人名録、第19回〜22回はこちらから。

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