嵐と地震とエンジェルズ by 3:16

    第26回 ウインターリーグとルール5ドラフト(Dec 16, 2003)

    第27回 ブースタークラブ忘年会(Jan 06, 2004)

    第28回 子供の野球はどうはじまるの?(Feb 17, 2004)

    第29回 おかげさまで2周年(Mar 16, 2004)

    第30回 エンジェルズ・ホームオープナー(Apr 15, 2004)



     (第26回) ウインターリーグとルール5ドラフト


     今回のぼーる通信が配信されます木曜日には(編集部註:今日は編集長の手術の都合により金曜日の配信です。申し訳ありません)、メジャー各チームのGM(ゼネラルマネジャー)さんたちが今年はニューオリンズに集まって行われるウインターミーティングも月曜日に終わって、活発なトレードやFA契約の話題で持ちきりなことでしょう。この冬は、昨年よりも大型のFAプレイヤーや、トレードが話題になっていて楽しみですね。


     このウインターミーティングの最後の月曜日に、ルール5ドラフトが行われました。第14回でもちょっとだけ触れて説明しませんでしたが、ルール5ドラフトは、ウインターミーティングの締めくくりに行われるドラフトで、マイナーで出場機会を得られていないプレイヤーの活性化を狙って行われているものです。
     チームに入って以来、3年間(18歳で入ったプレイヤーは4年間)、メジャーのロースターに入らなかったプレイヤーを、他のチームがドラフトし、$50,000を支払います。その1年間新しいチームの25人枠に定着しなかった場合は、ウエイバーに出すか、元のチームに$25,000で戻さなければなりません。
     MLBの選手の異動のルールについてはこちらなどを参考にしてみてくださいね。最後に、ルール5ドラフトについての簡単な説明が載っています。


     最近のルール5出身で活躍したプレイヤーとしては、ジェイ・ギボンズが上げられます。
     細部にわたるルールはちょっと入り組んでいまして、88年にはブレーブスが、自分のチームのプレイヤーをドラフトしたことがあるそうです。ロースターに入れておいたにもかかわらず、プロテクトしておくのを忘れてしまったんですね。


     さて、エンジェルズからは、セルヒオ・コントレラス外野手がデビルレイズにドラフトされました。昨年クエイクスにいて、今年はひとつ下のシングルAシダー・ラピッズに落ちていたんですが、この春あちらではメジャーの25人ロースターに入れるかもしれませんから、なんと3階級大特進です。
     ウインターリーグのメキシコでプレーしていたはずなんですが、そんなに目覚ましい活躍ぶりだったんでしょうか?
     クエイクスでは、目立ったところは無かったんですけれどね。頑張れ!


     それから、アリゾナフォールリーグの後、ウインターリーグは米国領プエルト・リコ、ドミニカ、メキシコ、ベネズエラなど各国で行われています。
     エンジェルズでは、第14回でご紹介しました、2000年ドラフト5位で100マイルの剛速球を投げる、ボビー・ジェンクス投手が絶好調です。
     昨年のフォールリーグで突然コントロールが付き始め、今年は2Aアーカンソーで16ゲームに先発、7勝2敗、防御率2.17、83イニングスを103奪三振でフォアボールも51だけ、そして被打率がなんと.191の素晴らしいピッチングでした。
     このウインターリーグもここまで3勝0敗、防御率2.63で、27回1/3を24奪三振だそうです。
     奪三振はともかく、フォアボールが減って安定してきた感じには、とても期待できますね。


     しかし、今シーズン終盤にメジャーのブルペンで活躍して、オリンピックのメンバーにも選ばれていたデレク・ターンボウ投手はさすがに疲れていたらしく、ひどく打ち込まれて、ウインターリーグを早めに切り上げて帰らされました。


     一方、K-Rodことフランキー・ロドリゲスにはこんな話題がありました。
     故郷のベネズエラに帰ったフランキーはもう、英雄ですから周りのみんなが放って置いてくれません。チームとしては、メジャーでリリーフとして86イニングスも投げたのだから、オフには肩を休息させて欲しいところなのですが、ベネズエラのウインターリーグで、快刀乱麻のピッチング。19イニングスで31奪三振。
     ちょっと、投げるの控えてくんないかなぁ・・・、でもなぁ、ってな事態になりました。


     パドレスでは、元今年前半ストームのセンターフィールダーにしてリードオフマンとして活躍し、2A、3Aととんとん拍子に登って、シーズン合計90盗塁を記録したフレディ・グズマンが、ウインターリーグでも大活躍しています。
     こういうヴィンス・コールマンみたいなタイプのリードオフマン、最近はなかなか居なくなってしまいましたので、パドレスとしても、楽しみな存在ですね。
     なお、ウインターリーグには出ていませんが、カーリル・グリーン遊撃手は来期、パドレスのレギュラー・ショートストップとして採用される予定です。


     クエイクス戦士、ストーム戦士の活躍を見るにつけ、本当に嬉しい気持ちになりますね。


     ちなみに、6月に行われるよく知られているアマチュア・ドラフト、いわゆる普通に言う"ドラフト"が、ルール4にあたるそうです。ルール5ドラフトというのは、「プロフェッショナル・ベイスボール・アグリーメント」に記載されている場所に由来した"あだ名"なんですね。


    (Dec 16, 2003) 



     (第27回) ブースタークラブ忘年会


     昨年末の12月の土曜日。
     クエイクス・ブースタークラブ(後援会)の忘年会がありました。


     正確に言うと、忘年会とは言いませんね。でも、最近はXmasパーティーとも言いません。米国にはいろいろな宗教の人がいることに配慮して、「メリー・クリスマス!」っていうお祝いの言葉自体、「Happy Holidays!」って言うみたいですね。


     このパーティーは、後援会の人たちの1年間をねぎらって行われる親睦会みたいなもので、potluck形式で行われる、ざっくばらんなものでした。potluckというのは、みんながご馳走を持ち寄って行うお食事会のことで、金曜日のお昼休みに職場で行われていたり、結構ポピュラーなパーティーのやり方です。
     後援会長さんのお宅ばかりでなく、持ち回りで行われているみたいで、今年はランチョクカマンガのPaulさんのお宅で行われました。
     電話番号の末尾で、アペタイザーを持ってくる人、メインになるディッシュを持ってくる人、デザートを持ってくる人に手分けされていて、いろいろな食べ物がたくさん集まりました。


     マイナーリーグのプレイヤー達は、チームから昇格するたびに引越ししなくちゃならないし、外国から来ているプレイヤーだって多いし、年俸もまだ安くてアパート代もバカにならなかったりしますので、こうしたブースタークラブのメンバーの家に居候して住んでたりすることも多いんですよ。
     そうやって、自分のうちから球場に通って頑張っていた子が、後にメジャーに上がったのをTVで観る、なんていうのは、格別の楽しみですね。


     今回もっぱらの話題の中心になったのは、昨年の11月6日に亡くなった、スパイダー・ジョージェンスンさんの話でした。
     ブルックリン・ドジャーズや、ニューヨーク・ジャイアンツでおもに3塁手としてプレイし、後に、シカゴ・カブスのスカウトとしても活躍なさいました。
     ランチョクカマンガの住人で、長い間のシーズンチケットホルダーで、ほとんど全部のクエイクスのホームゲームを観戦なさって居たんだそうです。


    ジョン・”スパイダー”・ジョージェンスン


     このほどクエイクスでもオフィシャルに、スパイダーさんを2003年ファン・オブ・ザ・イヤーとして称えることになりました。


     さて、こうしたブースタークラブ独自で行うもの以外に、チームのファンを交えてのオフシーズンの行事は公式のものだけでも結構あります。


    クエイクス・グランドスラム・クリスマスパーティー


     これは、12/15日の平日に球場のザ・エピセンターで3,000人の子供たちを招待して、フットボールや野球やサッカー、オリンピック選手などのサイン会も行われました。


    ブレクファスト・ウイズ・(エンジェルズ)ブースターズ


     これは、エンジェルズが主催の朝食会で、Matt Hensley投手とPhil Wilson投手が参加しました。
     会場は、サンタアナにある、こういった集会所のようなロッジです。


    2004ホット・ストーブ・バンケット

     こちらはダブルツリー・ホテルで行われる立食パーティーのようなもので、1月25日に、エンジェルズの以前のスタープレイヤー、ジム・アボット投手を迎えて行われます。
     同日、ジョン・”スパイダー”・ジョージェンスンさんの追悼と表彰も行われる予定です。


     オフのこうした催しの数々は、地域社会とチームとプレイヤーと、それを支える人たちとをつなぐ、ひとつのツールになっている訳ですね。


     次回は・・・、


     ホット・ストーブ・バンケットに招待されていますので、時間の都合が上手くついて参加できましたら、この模様をリポートしようと思います。


    (Jan 06, 2004) 



     (第28回) 子供の野球はどうはじまるの?


     いよいよ、待ちに待った野球シーズンの到来です!
     今年のオフシーズンは、A-Rodのボストンへの移籍騒ぎで大きく揺れた末、なんとキャンプ直前になってヤンキースへの移籍が決まり、楽しみになって来ました。
     いよいよシーズン入り!って言う感じがしてきましたね。
     昨年の2月にも、大学野球のシーズンが始まって、メジャーリーグのスプリングキャンプが始まる、まさに2月は野球にとってはスタートの月ですって、ご紹介しましたっけ(第16回です)。


     昨年、惜しくもNCAAカレッジ・ワールド・シリーズTでの優勝を逃した我らが州立大Fullertonタイタンズは、今年は実は苦難のスタートを切っています。(昨年のチャンピオンシップの模様は、第20回をご参照ください。)
     昨年、最後の最後、手痛いところで逆転負けを喫した宿敵スタンフォード相手に、今年はなんと開幕から相手ホームで3連敗。
     グッドウイン・フィールドに戻りUCLVにかろうじて3連勝はしたものの、続くロードのアリゾナ大3連戦は、大味な打ち合いの末、2連敗の後やっと一矢を報いました。


     主力のシニアが抜け、昨年の終盤大活躍をした若いピッチャー達、ライアン・シュレッペル投手や、ダスティン・ミラー投手の調整がうまく行かなくて出遅れたことが、どうやら大きな誤算だったようです。巻き返してくれますでしょうか?
     そうでなくても、クローザーのチーフがエキスポズに1位指名されて抜けてしまったんですから、接戦に強いスタイルにもかげりが出そうです。


     さて、今回は、小学生の子供を持つ近所の友人に子供の野球リーグの話を聞きましたので、それをご紹介しようと思います。


     ここサザン・カリフォルニアでは、小学校でも、2月は野球シーズン開始のシーズンです(学校によって少し違うかもしれませんので、ご参考までに)。
     日本と同じように、小さい子供はプラスティックのおもちゃのボールやバットで遊ぶところから始まり、お父さんとのキャッチボールがすべての基本になって、野球とのふれあいが始まります(余談ですが、最近の日本と同じく、男の子も女の子も小さい子供は最初、ボールひとつで出来るサッカーをして遊ぶようですよ)。
     そして小学校に入ると、野球を始めます。


     日本と同じようなゴム製の「軟球」はアメリカには存在していません。でも、似たようなものはアメリカにもあって、子供用の少し柔らかいボールを使うんです。縫い目があって、硬球に似たような外見ですが、ずっと柔らかいです。大きくはありません。
     低学年のうちは、打ちやすいようにおおきいソフトボールを使うこともあるそうです。


     日本と違うかなー、と思ったのは、練習よりもゲームが中心になるところです。
     全体のコーチは大抵学校から出ますが、ボランティアで親御さんたちからコーチになれる人を募ります。そして、8チームなりでリーグを構成、プレイヤーをドラフトするんです。
     100人からの子供のスキルを、ちゃんとトライアウトをやって試し、チーム構成をするんですよ。各チーム大体12名くらいで構成しますから、すべての子供に出場機会はありますし、チームワークも大切になってきます。
     3年生までは、「T−ボール」といって、棒の上に乗っかったボールを打つところから始めて、ピッチャーは投げない形式の野球でゲームをします。
     4年生から、ピッチャーが投げた球を打つ本格的な野球を始めるんだそうです。


     野球をこの時期のスポーツに選んだ子供は、$50-60を学校に払って、ユニフォームやグラブ、道具一式を揃えて、チーム単位で練習します。
     「こんど、どこどこのチームとゲームをやるから、練習しよう!」っていうモチベーションで練習する訳ですね。
     グラブ裁きは、最初から逆シングルでのボールの捕り方も教えていて、なかなかどうして、みんなかっこいい。
     この時期は、女の子も(一般的には男の子より成長が早いですから)男の子も、入り混じってのチーム構成になっているようです。


     日本でいう中学生の年齢からは、野球のボールは、いわゆる皮製の硬球になります。ですから、大人になって草野球のつもりで「野球をやっている」と言うと、アメリカ人からはとても感心した様子で褒められますので、ご注意を。
     なんでもかんでもアメリカ式がいいとは決して思っていませんが、いわゆる練習のための練習、球拾いから始まる訓練、下手でもミスの少ない正面に回りこむ守備、徹底したバント練習、そういったアプローチはそろそろ考え直す時期に来ているかもしれませんね。
     子供たちの楽しそうにプレイする様や、そして失敗すると悔しくて泣きそうな、時にはナーバスになってドキドキしたりしている様、いいプレイをして得意そうな顔を見せている様なんかを見て、私は日本で大人になってから体験した草野球で初めて、非常に楽しい思いをしたことを思い出しました。


     次回は・・・、


     スプリング・キャンプでの、クエイクス戦士、ストーム戦士の活躍ぶりをお伝えする予定です。


    (Feb 17, 2004) 



     (第29回) おかげさまで2周年


     本メールマガジン、ぼーる通信にて「嵐と地震とエンジェルズ」の連載が始まってから、早くも丁度2年がたちました。早かったですかね?
     昨年も申し上げましたが、これまでお付き合いくださったみなさん、編集長ともども心から感謝しております。本当にご愛顧ありがとうございます。


     2年前に始まったこの連載ですが、連載開始当初の意図したところがみなさんに伝わっておりますでしょうか?


    ●なぜ、メジャーリーグのプレイヤー達は「kid」と呼ばれ、ランディ・ジョンソンやカート・シリングの歳になっても、「リーサル”boys”」などと呼ばれているのか?
    ●なぜアメリカの球場では、どこもあんなに地元びいきなのか?
    ●アメリカのビジネスマンは、どうして当たり前のようにフットボールや野球の話をする人が多いのか?
    ●どうしてあんな、ミッチ・ウイリアムスみたいな毎回転びながら投げるようなフォームのピッチャーを、誰もどのコーチも直さないまま、メジャーのそれも堂々のクローザーにまでなっちゃうのか?・・・・・・??


     ・・・こういったいくつかの疑問について、なるほど、なるほど。っていう風に感じていただけていましたら、嬉しい限りです。


     正直、いい年にスタートしたなぁ、というのが私の実感です。
     メジャーは遥か彼方のシングルAをリポートしてきて、これほど素晴らしいプレイヤーたちの活躍ぶりを、わずか2年の間にこれだけご報告することが出来たのは、本当に運が良かった。


     クエイクスからは、K-Rodことフランシスコ・ロドリゲスが見事な活躍を見せてメジャーのブルペンに定着、そして将来のエンジェルズのコア(核)になるプレイヤーとして2A、3A、メジャーまであと一息というところまで順調にステップを進めているダラス・マクファーソン3塁手、ケイシー・コッチマン1塁手、ジェフ・マチス捕手、ボビー・ジェンクス、アービン・”マジック”・サンタナ投手ら、本当に有力なプレイヤーたちをご紹介してまいりました。


     ストームからも、オリバー・ペレス投手はしっかりと先発ローテーションに定着し、ブライアン・ジャイルズとのトレードでパイレーツへ移籍しましたが、今年も先発ローテーションに食い込むことでしょうし、ザビアー・ネイディ外野手は昨年1年をほぼメジャーで過ごしました。今年も、外野の一角、あるいはファーストを視野に入れて、メジャーでのレギュラー争いです。
     加えて今年は、このスプリングキャンプでカリール・グリーンが正遊撃手の座を射止めそうです。
     ジョン・ノット1塁手、ジェシー・バーフィールド2塁手といったところも将来のパドレスのコアになるプレイヤーですし、タグ・ボズィード、J.J.フューメニアックも、このまま上手く成長すればチャンスは充分です。

     彼らについては、よろしければこちらから、バックナンバーを参照なさってみてください。


     個人的には、昨年のスプリングでは調子が悪かったものの、この間のウインターリーグでなんと「103マイル(約165.8キロ)/h」の剛速球を記録したボビー・ジェンクスの、”コントロールの改善振り”に目を見張るものがあります。コロンとエスコバーの先発投手2人をFAで獲得し補強したエンジェルズではありますが、もしかすると今年後半にはボビーが上がってくるかもしれません。


     3月も中盤に差し掛かり、メジャーキャンプに召集されていたマイナーリーグのプレイヤーたちも、今頃は徐々にマイナーのキャンプに送り返され始めています。
     本当に、開幕前のこの時期は、わくわくわくわくしますねー。
     オープン戦も、ゲーム中盤以降の5−9イニングスには期待のマイナーリーガーが中心のメンバーになりますので、ラジオで彼らの活躍ぶりを聴くことが出来たりして、いよいよもうすぐだなって思えてきます。


     2002年、2003年の、エンジェルズとパドレスのドラフト1位2位のプレイヤーについても、ちょっとだけ触れておきましょう。


     パドレスは2003年、21歳のピッチャーを1位2位で指名しました。
     ティム・スタンファー投手、そして、ダニエル・ムーア投手です。今年、ストームに上がって来て欲しいところ。
     ちなみに2002年1位のカリール・グリーンは今年からメジャー定着、2位のウイリアム・ジョンソン1塁手は結局パドレスとサインしなかったんでしょうか?
     2001年2位指名だったマット・ハリントン投手はパドレスと契約せず、2003年に24位でレッズに指名を受けました。スピードがガタ落ちしたらしいです。
     ちょっとこのところスカウトが上手くいっていない印象ですね。


     エンジェルズは2003年、18歳のプレイヤーたちを1位2位で指名しました。
     ブランドン・ウッド遊撃手と、アンソニー・ウィッティントン投手。
     この子たちはまだ若いですから、今年はクエイクスに上がってこないと思います。

     2002年もピッチャー2人で、今年21歳。
     ジョー・サンダース投手と、ケヴィン・ジェプスン投手。どちらか一人、クエイクスに上がってくることを期待しましょう。


     次回は・・・、


     開幕後のクエイクス、ストームの有力プレイヤーたちについて、リポートしたいと思っています。



    (Mar 16, 2004) 



     (第30回) エンジェルズ・ホームオープナー


     3年目に突入しました「嵐と地震とエンジェルズ」、今まであまりエンジェルズが出てきませんでしたが、今回はエンジェルズのホーム・オープニング・ゲームであれこれ思ったこと、をリポートしようと思います(今までお付き合いくださったみなさんはもう慣れっこになっていただけたかも知れませんが)。
     のっけからまたまた次回予告の予定を変更してしまい、・・・申し訳ありません。


     今年(2004年)のエンジェルズは開幕をロードで迎え、日程の関係でホーム・オープニング・ゲームは30球団の一番最後、4月13日になりました。
     今年のホーム・オープナーは、我々ファンにとって格別のものでした。


     なにしろエンジェルズは、皆さんもご存知のように昨年シーズン途中から新オーナーを迎えました。
     そして、目立ちはしませんが、いろいろな面でリニューアルされた新しい球場の、新しいチームの、待ちに待った開幕戦だったからなんです。
     アルテ・モレノさんという方で、メジャーリーグ初のヒスパニック系オーナーであることや、ゲレーロ、コロンなど、大型の補強をしたオーナーとして、詳しいファンの間では認知されていることと思います。


     しかしこのオーナーは、我々ファンにとっては一味違う人物でした。まさにチームオーナーとしては理想的な方だったのです。ご紹介しますね。
     主にアリゾナでアウトドアー広告を扱う会社を経営なさっていて、ビジネスで大成功を収めたモレノ・オーナーは、以前はダイアモンドバックスの部分オーナーもなさっていて、とても野球が好きな方です。
     また、さらにその以前には、ソルトレイクのシングルA、トラッパーズを所有なさっていて、よくファンと一緒にスタンドでビール片手に観戦、談笑したりされていたそうですよ。
     そして昨年5月に、旧経営陣であるところのディズニー・グループからエンジェルズを、$182MMで買い取りました。


     該当する記事


     直後にいろいろなコメントはありましたが、私にとって印象的だったのは、「野球チームを持つのは、男の夢だからね。」という言葉です。
     モレノ・オーナーはチーム買収後はしばし大きな動きを見せず、その代わりにちょくちょくスタンドに姿を見せました。あるときはアウェイで、ある時はホームで、上の方にある前オーナールームではなくて、ファンとまぎれてスタンドに、です。


     そして、まずビールの値段を下げました。
     それから、ファミリー用の、より安価なチケットを発売しました。食べ物がつくセットチケットも発売しました。
     ヒスパニック・プレイヤーズ・インビテーションという催しをやり、オーナー自らもこれに参加してファンサービスしました。
     ストーンマンGMおよびチームスタッフの希望に沿い、40人ロースターに枠を空けるために、ケビン・エイピアーを放出することにOKを出しました。まだ契約に1年半残っていて$16MMものお金を払わなければならないにもかかわらず、です。


     そして、皆さんもご存知の、オフの戦力補強。
     ゲレーロに関しては、ストーンマンGMの予算オーバーの打診に、

    「こんな素晴らしいプレイヤーを得られるかもしれない一生に一度あるかどうかっていう機会だ。オファーしなさい。」

     って言ったそうです。モントリオールにオフィスがあって、良く観ていたらしいですね。
     今年のFA獲得は28歳3人に30歳のコロン。予算オーバーは将来的投資として考えているとのこと。


     でも、ただビッグマネーを使ったわけではないんですよね、エンジェルズファンからすると。
     もっとも素晴らしいと思ったのは、これです。


     ネーミングライツで$60MMの契約をしていたエジソン・インターナショナルとの契約を見直して白紙に戻し、ホーム球場の名前を、エンジェルスタジアム・オブ・アナハイムに戻しました。ビッグAの名前が戻るのは、昔からのファンにとって、どんなに嬉しかったか!
     ホーム用のユニフォームにはAngels、アウエイ用のユニフォームにはAnaheimと入っていたんですが、アウエイ用もAngelsに変えました。


     つまり、モレノ・オーナーは、『エンジェルズ』をひとつのブランドネームとして売り込む方針に切り替えたんです。
     これが上手く行くかどうかは、今後、分かってくると思います。


     2月には、エンジェルズ・フェスタという、ファンとプレイヤーとの新しい交流の場をセッティング。私も参加して、サインをもらってきました。
     オーナー自ら、キャンプにも参加しました。
     来年以降のキャンプ地も変更して、新しい場所にエンジェルタウンを築く予定です。


     そして迎えた開幕戦。
     スタジアムには、$20MMもかけた化粧直しがなされていました。
     それまでのライト寄りにあったドット型のバックスクリーンを、トリニトロン型の美しい画面のものに取り替え、レフト側にもきれいなスクリーンを設置しました。
     球場内のあちこちのディスプレイが刷新されていました。


     ディスプレイ刷新についての記事


     この変更なら、球場に愛着のあったファンにも、受け入れられやすいと思います。


     本当にきれいになった球場で、モレノ・オーナーが始球式をしました。キャッチャーは、元名キャッチャーだったソーシア監督。
     ファンはみんな、感謝の気持ちでスタンディングオベーションを送りました。
     「僕達のチームをありがとう!」本当にそんな気持ちでした。


     そして球場は、なにかしら赤いチームグッズを身に着けた人でいっぱい。まるで赤い海のようでした。
     かつての(2002年以前の)エンジェルズには見られなかった光景です。


     すでにモレノ・オーナーのマーケッティング戦略は、成功に向かっているように思えます。
     巷では、さまざまなエンジェルズグッズが手に入るようになりました。ベビー服なんかも、ドジャーズグッズやヤンキーズグッズのように、いろいろな種類が出回るようになって、ファンとしても嬉しい悲鳴でちょっと面食らっています。



    ●映画、スクーピー・ドゥ2でのプレス・カンファレンスでの一こま。以前にはこんなこと、考えられませんでした。アリシア、ありがとう。

     チケットも、連日ほぼ完売。嬉しいような、チケット取るのが大変で困るような。


     すっかり様変わりしたのに、しかも、オールドファンの顔にも笑顔が見られる、スタジアム。新戦力ウラジミール・ゲレーロのエンジェルスタジアムでの初ホームランも出て逆転勝ちした開幕戦。もう、ファンとしては感無量です。
     みんなの感謝のスタンディング・オベーションは、心からのものだったと思います。


     なお、つい昨日(こちらの木曜日夜)、クエイクスがエンジェルズと4年の契約を更新、ランチョクカマンガ・クエイクスとして活動していくことになりました。


     次回は・・・、


     2002年ドラフト1位、期待のJoe Saunders左腕投手のクエイクスでの活躍の様子をリポートできる予定です。


    (Apr 15, 2004) 


     第31回〜35回はこちら

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