嵐と地震とエンジェルズ by 3:16
第36回 マツイは生まれながらの4番打者かも(Oct 19, 2004)
第37回 2004年シーズンを振り返って 〜前編〜(Nov 15, 2004)
第38回 2004年シーズンを振り返って 〜後編〜(Dec 13, 2004)
第39回 チーム名は誰のため? (救世主オーナーの裏切り?か?)(Jan. 17th, 2005)
第40回 Save the Anaheim Angels?(Feb. 16th, 2005)
(第36回) マツイは生まれながらの4番打者かも
我がエンジェルズは最後の最後まで厳しいシーズンを戦い抜き、最終戦わずか1ゲームを残して、アメリカンリーグ・ウエストのチャンピオンに輝きました。
今シーズンのスケジュールは、最終7ゲームをTEX、OAKのアウエイでプレイするというスケジュールでしたので、応援にいけなかったのが残念です。
シーズンのホーム最終戦は、ものすごい盛り上がりで、2002年のポストシーズンを思い出しました。そして、今年は応援が足りなかったな、この球場の雰囲気ならチームはもっと勝ったかもしれないな、と思いちょっと反省しました。
昨オフにきれいに改装したビッグAことエンジェルスタジアムのバックスクリーン上方にある「Los Angeles Times」紙の大きな青いサイン、シーズン初めの頃に、「優勝したら赤くしてもいいよ」なんていう冗談が交わされていたんですが、プレイオフのゲームでは、本当に赤くなっていました。・・・これはけっこう嬉しかったな。
来年は、元クエイクス戦士から、ダラス・マクファーソン3塁手、ケイシー・コッチマン1塁手がメジャーに本格的に上がって来そうな感じで、本当に楽しみです。
プレイオフのゲームを戦える、と言うことはプレイヤーたちにとって、本当に名誉なことですからね、来年も期待していますよ!
さて、アメリカンリーグのチャンピオンシップでは、ヤンキーズのマツイが今ポストシーズンも4番を打ち、勝てばMVPに選ばれるだろう程の活躍をみせていますが(3番打者最強説の感が強い米国でも、4番打者だけをクリーンナップと呼びますし、特別な存在として捉えられていますので、これは大変名誉なことだと思います)、そんな中、じつはアリゾナ・フォールリーグは既に始まっています。
リーグの構成や、参加資格などは、昨年のリポートでご確認くださいね。アリゾナ・フォールリーグのリポートは第25回(および第14回)です。
●MLB.comのアリゾナフォールリーグ公式HPはこちら。
今年は、エンジェルズのプレイヤーはフェニックス・デザートドッグズ(砂漠犬)、パドレスのプレイヤーはピオリア・ハベリナス(イノシシ)に所属しています。
元クエイクス戦士は5人。中でも注目は、第32回でもご紹介したマイケル・ナポリ1塁手とトミー・マーフィー外野手、そして昨年に続いてフォールリーグ参加のニック・ゴーノールト外野手です。
(ジョナサン・ローウェンホースト投手は2000年まだエンジェルズ傘下だったころの元ストーム戦士です。)
剛打のマイケルは以前ご紹介した時には捕手でしたが、打撃を活かすため、1塁手にコンバートされました。
元ストーム戦士も5人。先週ちょっと話題にした、オリンピックで全日本を破ったオーストラリアチームのクリス・オクスプリング投手と、5年前レッドソックスに18歳でドラフト1位指名されたブラッド・ベイカー投手も注目です。スターターからリリーバーへ転向、去年ストームにいたときにチェンジアップを習得して、急にピッチングが良くなったらしいです。
そしてなんと言っても、こちらではもうおなじみのジョシュ・バーフィールド2塁手(第21回をご参照ください)。
スコッツデール・スコーピオンズにいる、トニー・グインの息子、アンソニー君との対戦も楽しみですね。
アリゾナ・フォールリーグには、トニー・ペーニャJr.君も参加しているそうです。まだ始まったばかりですが、スタッツはこちらでご覧になれます。
そして、このフォールリーグでは、ギャレット・アンダーソンがアリゾナフォールリーグの殿堂入りすることが決まりました。
上記の殿堂入りを伝える記事。
トニー・ペーニャ(現KCロイヤルズ監督)、カーディナルズのアルバート・プーホルズも一緒に殿堂入りする予定です。当時プーホルズは3塁手でしたね。
クエイクス戦士やストーム戦士の大活躍、そして大成長を期待しましょう!
第34回に話題として取り上げましたカーティス・プライド外野手は、もうすぐ行われるルール5ドラフトに向けて、エンジェルズが期待の若手プレイヤーを40人ロースター枠に入れてプロテクトする枠を確保するために3A行きを打診されましたが、これを断わって、FAになる道を選びました。
来年のスプリング・キャンプではどこの球団に顔をみせてくれるのか、楽しみにしようと思います。頑張れ!
(Oct 19, 2004)
(第37回) 2004年シーズンを振り返って 〜前編〜
今回は、今季大活躍した5人の元クエイクス、ストーム戦士のプレイヤー達にスポットを当てて、今シーズンを振り返ってみたいと思います。
ジェイクは、このメルマガの連載が始まるほんのちょっと前までストームで投げていました。
かねてからケビン・タワーズGMが、「あの子は若いのに、投球について話すときはまるでマダックスのようだ。とてもクレバーなピッチャーで、将来必ずローテーションを担うようになるよ。」と、大変評価されていました。驚くなかれ、まだ時々ホームシックになったりもするmommy's boyの23歳です。
今年は新球場もオープン、ローテーションにもしっかりと入りました。パドレスの充実したリリーフ陣にも守られ、5〜7イニングズをどのゲームも2点以下に抑える、素晴らしいピッチング振りを展開。
しかし5月半ばに上腕の張りが出て初のDL(故障者リスト)入りを経験しました。約1ヵ月半のリタイア(ちなみにチームがDL入りを決定した前日に2人目のお子さんが誕生しています。赤ちゃんには良かったかな)。
7月にローテーションに戻って来てからも、終盤まで優勝争いを続けるパドレスの厳しい戦いの中、もはやエースともいうべきピッチングを持続、規定投球回数にもなんとか届いて、なんとなんと、リーグ最優秀防御率の栄冠に輝きました!
おめでとう!
DLから復活してからは、投球数を少なく抑えて8回まで投げきるゲームも増えてきました。シーズンを通して4点取られたゲームが2つと、3点取られたゲームが2つあるだけで、ほとんど全部のゲームを2点以下で抑えてしまいましたし、早いイニングでの降板はシーズンを通して4失点で4回降板したゲーム、たったひとつだけです。
こんなに安定した投球を見せたピッチャーは、ちょっと他には見当たりませんね。褒める言葉が見つからないくらい素晴らしいシーズンでした。
ジェイクは、ピッチングの組み立てが本当に素晴らしいですね。バリー・ボンズにも向かっていくガッツが真骨頂です。
27ゲームに先発登板、166回1/3を投げて、15勝6敗、防御率2.27、奪三振173、四死球わずかに53という、素晴らしい投球振りでした。もしも故障がなかったらサイヤング賞候補でしたね、きっと。
またピーヴィーは、今年の日米野球にMLB選抜のプレイヤーとして出場、第4戦、第8戦で先発して好投をみせたそうですね。
本人は、「日本のマウンドは柔らかくてふわふわで、(プレートの)ゴムも違うし、バランスとるのに精一杯で上手く投げられなかったよ。」と、コメントしていましたので、本当の凄いところをお見せできたのかどうか、ちょっと心配ですが。
もう、この連載では何度も何度も出てきて、お馴染みですね。K-Rod。
今年も69ゲームに登板して、84イニングズで奪三振がなんと123!こんな奪取率、リーグ1位どころか、見たこともありません。12セーブ、ホールド27、防御率1.82という成績以上の存在感。
被打率に至っては.172。今年も全く相手に打たせませんでした。さらに凄みを増してきています。今や球界を代表するリリーフ投手と言ってもおかしくありません。
守護神パーシバルが故障離脱した時はクローザーとしても活躍、間違いなくエンジェルズの地区優勝に最も貢献した立役者のひとりでした。
場合によっては、クローザーよりも厳しい場面で投げる場合も少なくないセットアッパーの重要性は昨今、球界でも注目されていますよね。そういうわけで、昨年のドネリーに続いて、オールスターに選出されました。
故郷のベネズエラから、育ててくれたおばあちゃん他、家族をゲームに招待したのですが、ビザがおりにくくて、間に合うかどうかぎりぎりでハラハラしました。こちらは、おばあちゃんっ子って訳です。
そして、ついにこのオフには、チームから来季のクローザーとして認められ、まだまだセットアッパーに甘んじるつもりのない、9年間もの間エンジェルズの一筋に守護神として君臨、その地位に恥じることない成績、7年連続30セーブ以上を続けるという偉業を成し遂げているパーシバルを、表現としては良くありませんが、チームから追い落としてしまう形になりました。
うーん、すごい。
エンジェルズのクローザー世代交代の記事。
ただし、まだ多少経験不足の面があって、大事な場面の、特に代わり端に、そして特に左バッターの時に、高目にハンガー・スライダーを浮かせてしまうことがあるんですが、来季はさらに経験を積んで、一層とてつもないプレイヤーに成長してくれることでしょう。まだ22歳ですが、ポストシーズンでのピッチングも今年で2度目の経験です。なんという貴重な経験だったことでしょう。
フランキーも、今年の日米野球にMLB選抜のプレイヤーとして来日しているんですよね。ピッチング振りをたくさんの方に見ていただけるのは、嬉しい限りです。
次回は、パイレーツに移籍したオリバー・ペレス投手、ルーキー・オブ・ザ・イヤーとゴールデン・グラブ賞ともに次点の大活躍だったカリル・グリーン遊撃手、そしてマイナーリーグ・プレイヤー・オブ・ザ・イヤーに輝いたダラス・マクファーソン3塁手の活躍を振り返ります。
※ちなみに前回、3A行きを断わってFA登録したとお伝えしましたカーティス・プライド外野手ですが、思いがけずエンジェルズとマイナー契約を結んでくれました。
これから行われるルール5ドラフトに向けて、チームが期待の若手プレイヤーを40人ロースター枠に入れてプロテクトする意味合いが強いチーム判断でしたので、スプリングキャンプではまた、横一線です。ベテラン、もうひと踏ん張りお願いしますね!
(Nov 15, 2004)
(第38回) 2004年シーズンを振り返って 〜後編〜
今季大活躍した5人の元クエイクス、ストーム戦士のプレイヤー達にスポットを当てて、今シーズンを振り返る、の後編です。
バックナンバーはこちらからご確認ください。
オリバーは、実はこの連載を始めようかな?、というきっかけになったプレイヤーです。何度も登場していますよね。私は彼のピッチングがとても好きです。
昨年オフ、パドレスが地元出身のスーパープレイヤー、ブライアン・ジャイルズを獲得するためにジェイソン・ベイと共にパイレーツへと移籍しました。
2004年シーズンは、本当に素晴らしいピッチングを見せてくれました。
30ゲームに先発登板、12勝10敗、196イニングズで防御率2.98(リーグ6位)、WHIP1.15(同7位)、非打率.207(同3位)、奪三振239(同4位)、フォアボールはわずかに81個(同9位)でした。完投が2回、うちひとつは完封です。
そしてなんと言っても、三振奪取率は10.97で堂々のリーグ1位でしたよ!
これに加え、ナ・リーグのルーキー・オブ・ザ・イヤーをジェイソン・ベイが獲得したこともあって、パドレスはこのトレードでずいぶん損したんじゃないか?なんていう声まで聞かれるくらいの二人の活躍ぶりです。
第35回でも少し触れましたが、パイレーツのドナルド・ロイ・”スピン”・ウイリアムズ投手コーチの指導も、オリバーにはとても合っていたのではないでしょうか。
目に見えて変わったのは、やや腕を振る軌道がサイド寄りに下がったことくらいですが、フォアボールが激減し、大崩れをしなくなりました。まして、なかなかヒットを打たれない。
もともとクエイクス時代から、右バッターの外角へ、いい角度で入るストレートのボールの回転がとてもいいタイプのピッチャーなんです。
ストレートと同じ振りで投げ込むスライダーの使い方もより効果的になり、チェンジアップもうまく使えるようになりました。もしパイレーツ打線がもう少しバックアップ出来ていたら、18勝していても全然おかしくない成績です。
メキシコ生まれの、まだ23歳。来年の活躍はもうお墨付き?です。
おととしメジャーに上がって初めてのマウンドで、最初のバッターとしてあのイチローと対戦し、三振を奪ってみせたピッチングは、伊達ではありませんでした。
第10回にカリールのストーム・デビュー戦をお伝えして以来、一度も裏切られることなく、常に順調な成長振りをみせてくれました。非常に才能のあるプレイヤーだと思います。
今年はチームの意向(台所事情)もあって、正遊撃手に定着。かねてから守備範囲が広く縦横への無駄の無い動きが素晴らしいディフェンスの能力に対しては、タワーズGMから高く評価を受けていましたが、オフェンスの方でも、139ゲームに出場し484打席で打率.273、出塁率.349、ホームラン15本と、なかなかパワーのあるところをみせてくれました。ネビンの26本、ジャイルズの23本、クレスコの9本というところを見ても、HRの出にくくなった新球場での数字を思えば、ルーキーの遊撃手としては申し分ないパワーです。
ルーキー・オブ・ザ・イヤーは、シーズン最後に指を骨折、ゲームを欠場せざるを得なかったのも響いてしまい、ジェイソン・ベイに次点で敗れてしまいましたが、元ルームメイトの賞獲得に、満足そうです。
上記のグリーン選手の気持ちを伝える記事。
ナ・リーグ遊撃手のゴールド・グラブ賞も、惜しくもドジャーズのイズタリスの次点でした。知名度が上がり、全米の記者さんたちの目にもっと触れるようになってくれば、近い将来獲得できることでしょう。
Toppsの、ルーキー・オールスターにも選ばれました。
該当の記事。
今年は、2Aアーカンソーと3Aソルトレイクでプレイし、打率はそれぞれ.321..313、そしてそれぞれで20本ずつ、合計なんと40本ものHRを放ち、マイナーリーグ・プレイヤー・オブ・ザ・イヤーに輝きました。
9月のロースター枠拡大でメジャーにコールアップされ、16ゲーム40打席で打率こそ.225でしたが、HR3本を放ち、パワーのあるところを見せました。
まだまだ、HR今年通算43本を放つものの、三振も186を数える荒削りなパワーヒッター振りですが、結果的に、故障でシーズン大半を欠場した正3塁手のトロイ・グラウスをもチームから押し出してしまうほど、大変な成長振りでした。
ダラスは、今オフに結婚式を挙げる予定です。新婚の奥さんのためにも、スプリング・キャンプで順調な仕上がりを見せて、来期は正3塁手として大いに活躍してもらいたいと思います。
エンジェルズは11月30日、元キューバのスラッガー、ケンドリー・モラレス1塁手(21歳)と6年契約を結びました。3塁、左翼も守れるそうで、来年にもメジャーで打てるような実力であれば、DHとしても考慮されています。
2年前、若干19歳でキューバのナショナルチームのクリンナップを打った21歳のスイッチヒッター、1Aのクエイクスは飛ばされてしまうかもしれませんが、大いに期待しています!
(Dec 13, 2004)
(第39回) チーム名は誰のため? (救世主オーナーの裏切り?か?)
2005年1月3日、エンジェルズはチーム名をロサンゼルス・エンジェルズと改称することを他の29球団に対して公式にアナウンスしました。(略号はLAAまたはLAとしてください。正式名称は「The Los Angeles Angels of Anaheim」です。)
みなさん、あけましておめでとうございます。
今回からは、いま地元で喧々諤々と話題になっているチーム改名のお話を連載2回に渡りまして、まとめておこうと思います。ちょうどこのメルマガが配信される頃に、2回目の裁判所での予審、公聴会が行われる予定です。
この裁判についての記事。
このエンジェルズのチーム改称のアナウンスを受けて、Anaheim市は直ちにエンジェルスを訴えました。
Anaheim市が準備した、Angelsと争うためのHP。
・・・モレノ・オーナーのやっていることは契約違反であり、”of Anaheim”というしっぽのような扱いは、Anaheim市に対する侮辱である。という主張です。
なんでこんなことになってしまったのでしょう?
日本においても、新球団「東北楽天ゴールデンイーグルス」が発足し、今季は盛り上がりそうな最中ではありますが、会社名の「楽天」を強調するのか、「東北」を前面に出して地域密着型のチーム作りをしていくのか、といった話題が議論されていますよね。
この際企業名が入るかは入らないかはもうひとつ別の問題とさせていただきまして、ここにひとつ素朴な疑問が沸きます。
なぜ、仙台ではなく、宮城でもなく、東北なのでしょうか?
今のところファン獲得と言う意味では大成功を収めていると言ってもいい福岡ダイエー(現ソフトバンク)・ホークスは、なぜ北九州でも九州でもなく、福岡だったのでしょうか?
・・・という観点で、今回のエンジェルズの問題を考えていただけたら、と思います。
モレノ・オーナーについては、第30回「エンジェルズ・ホームオープナー」の回で取り上げました。
チームを買い取ってからまず最初にビールの値段を下げ、その他にもチームにとってファンにとって良いことを着々と進め、そして昨オフもこのオフも常にポストシーズンを狙えるチームとしての補強をして、長期のビジョンに立ってのチーム作りをこなしてきている、ファンに人気のオーナーです。
しかしそうした業績は今やもうそっちのけで(昨今のメディアでは特に)完全に悪者扱いされてしまっています。
昨年のシーズン後、モレノ・オーナーが、チーム名をロサンゼルス・エンジェルズに変えようとしている、という話は、メディアにも伝わって来ていました。
理由はごくシンプルで、34万人のAnaheim市(あるいは300万人居るオレンジ郡)を名乗るより、広い意味でのLos Angelesエリア、1600万人の全米第2位のマーケットにチームをプロモートしていこう、もっとファンを増やそう、という発想です。
そしてこのアイデアを検討するためのシミュレーションを繰り返し、入念にマーケティングを重ねて準備してきていました。
実は、Los Angeles Angelsという名前には由緒がありまして、チーム創立最初の5年間はこの名前だった訳なのですが、長年のファンには、ちょっと抵抗があります。
当時とは別の、現在のAnaheimにあるAngelsの球場は、Los Angeles市にもLos Angeles郡にも入っていないというのがひとつの理由です。
ドジャーズへの対抗意識もあるかな。
それと、オレンジ郡に住んでいる人には、ロサンゼルスのおまけなんかじゃないぞ、独自の違う文化圏で、単なるベッドタウンなんかじゃないんだ。という気持ちもあるようです。
しかし、それよりも何よりも、現存する長年のファンの多くは、66年から96年まで30年間も続いた「California Angels」の名前にとても愛着を持っているから、変えるならその名前に戻して欲しいという気持ちがあるんです。
ことは、96年オフにさかのぼります。
当時オーナーになったディズニー社が、アナハイム・スタジアムを野球専門球場へと改修をする際、チーム名を「The Anaheim Angels」に変えることを代償に、市に改修費の一部$30MM(うち$10MMは後にディズニーが市に返還しましたので、市の負担は$20MMです)を負担してもらったのです。 (注:ディズニー側はこの時、$88MMを負担しています。が、翌年に電力会社のエジソンにネーミングライツを$50MMで売却していますので、結果的にディズニーは約$38MMぐらいの負担ですね。そしてこのエジソンの$50MMのうち約3/4残っていた金額は、契約を買い取って廃棄したことにより、結局モレノ・オーナーが負担しました。・・・ということはモレノさん、市よりたくさん出しています。)
このことにより、Anaheim市とディズニー社は2035年までの長期リース契約を結ぶにあたって、そのリース契約の中に、「球場名にAnaheimの名前を入れること」という条項と、「球団名にAnaheimの名前を入れること」という条項を入れていたのです。
これが、球場名や球団名に”of Anaheim”がくっ付いている理由です。
そして球場名は昨年、Edison International Field of Anaheimから、Angels Stadium of Anaheimへと、スムーズに変更されました。
しかし今回のチーム名変更は、裁判沙汰になるほどの騒動。Anaheim市のLos Angeles市に対する強い対抗心が窺われます。
曰く、「いままでふたつの市の名前の入った球団名など、プロスポーツ史上聞いたことの無い恥ずかしい名前だ」とか、「契約の主旨を捻じ曲げた詐欺行為だ」とか。
でもこの場合の「Los Angeles」は、市を指しては居ないのですけれどね。あくまでエリアなんですよ。
例を挙げて考えてみましょう。
New York Metsは、Flushing市にあります。テニスの全米オープンで有名なフラッシング・メドウの名前はご存知の方も少なくないでしょう?
しかし、仮にMetsが、Flushing Metsと改名したら、メリットがあるのでしょうか?
NFLのNY Giants、NY Jetsなどは、ニューヨークを名乗っていますが、実際にはNY市あるいはNY郡どころか、NY州内にすらありません。
またCalifornia Angelsと同じく州名を使っているTexas Rangersは、Arlington市にあって、Arlington Stadiumを本拠にしていました(現在は球場も建て替え、ネーミングライツでAmeriquest Field in Arlingtonに変わっています)。
California Angelsの(旧々呼称)Anaheim Stadiumとちょうど同じ関係ですね。
しかしこの場合、チームがArlington Rangersと改名することなどありえるでしょうか?
もし仮にやるなら、すぐとなりのIrving市にあるNFLのDallas Cowboys同様、Dallas Rangersでしょう。Dallas市としてではなく、大きな意味でのDallasエリアとして。
しかもこれに加えて、セントルイスに移転する前の94年まではLos Angeles RamsというNFLのチームが、Angelsと同じこのAnaheim市にある球場を本拠地としていたこともあるんです。
つまり私の見解では、現在、Anaheim Angelsか、Los Angeles Angelsかで裁判までやって揉めようとしていること自体がナンセンスで、もともとウオルト・ディズニーが、市からお金を引き出そうと画策し、97年にThe Anaheim Angelsにしてしまったことこそが、大きな間違いだったと思うのです。
無論ディズニーにとっては、ディズニーランドのあるAnaheimを有名にしたい、という点で多少のメリットもあったのかも知れません。
ですがこの場合は、あくまで資金が目的だったのではないかと私は考えているのです。そして、もしそうであれば、ファンや地域社会よりも、会社の事情を優先したディズニーの発想とでもいうべきなのではないでしょうか。
無論そのディズニーランドも、皮肉になことに、”アナハイムの(ディズニーランンド)”としてではなく、あくまで”ロサンゼルスの(ディズニーランド)”として有名なわけですが。
ちなみにNHLの、「Mighty Ducks of Anaheim」はいまだにディズニーがオーナーですが、売却先を探しているようです。
話をもとに戻します。
< br> Anaheim市が根拠にしている契約は、もともと長期球場リース契約であって、本来チームの運営にまで口を挟むような類の契約ではありません。
”of Anaheim”と改訂後もチーム名に入っている以上は、契約の文言には違反していないのです。
そこで法律的に勝ち目の無いAnaheim市側としては、HPまで立ち上げ、裁判を起こす気配をみせてマスコミをあおり、世論を味方につけようとするしか自らの立場を有利にする方法が無い訳です。
私としては、オレンジ・カウンティーの住民はLAのおまけだと思っていない、という主張は分かりますが、サンタ・アナ市やハンティントン・ビーチ市、オレンジ市、ガーデン・グローブ市、ニューポート・ビーチ市、タスティン市、ブエナ・パーク市、コスタ・メサ市、ラグナ・ビーチ市、サン・クレメンテ市、レイク・フォレスト市、アーバイン市など、その他33市もあるアナハイム市以外のオレンジ郡下の市の住民が、全員アナハイム市の味方をするとでも思っているのでしょうか?(一部、10市の”市長さん”からは支援の署名をもらっている旨が市のHPには書いてありますが。住民の総意とは思えません。)
しかしながら、ことをより複雑にしてしまっているのは、もはや8年前のディズニーとAnaheim市の問題ではなく、現在のAngelsとAnaheim市の問題になってしまっていることと、Californiaという名前にノスタルジーを感じているAngelsファンからの支持もこのチーム名改訂については得られないため、今回の改訂を断行したモレノ・オーナーへの世論の後押しが弱いところにあります。
もっとも、このチーム名改訂の断行がエンジェルズファンの支持を得られていないのは当然でしょう。
というのも、モレノ・オーナーがやろうとしているのは、新しいファンの拡大、より大きなマーケットでのチームのプロモートですので、我々既にエンジェルズ・ファンな人々を対象にした取り組みではないからです。
ただ、私を含め大半のファンにとっては、Anaheimの名前には大して愛着がありませんし、Angelsが同じスタジアムでプレーしている限り、今回のチーム名変更は大した問題ではありません(中には、今回の件に立腹しシーズンチケットを手放したという人も居るには居るようですが)。
冒頭でもCalifornia Angelsという名前への愛着があると軽く触れたとおり、California Angels に戻せないものなんだろうか?という意見が少なくとも過半数を占めている程度です。
ここで、エンジェルズのホーム移転の歴史について軽くおさらいしておきましょう。
もともとチームは、61年にLos Angeles Angelsとして立ち上がり、最初の年はそれまで3Aのチームとしてプレーしていた球場、かつてLAに位置していた「リグレー・フィールド」をホームとしていました。
翌62年からは、この年に出来上がったドジャースタジアムに間借りをしつつ、新しく球場を建設、66年から現在のAnaheimの球場に移動します。
この際、Long Beach市が誘致先の最有力候補として挙がっていましたが、市の出した条件がLong Beach Angelsにすることだったため、当時のオーナー、カントリー歌手のジーン・オートリーさんはこれを嫌い、チーム名の要求をしなかったAnaheim市に決まったという経緯もあったのだそうです。もちろんこの時にも、市は資金の一部を出資しています。
その後1月7日、Anaheim市のAngelsに対するチーム名変更を直ちに指し止める仮指し止め申請は、最初の裁判所の予審において却下されました。
次の予審予定は、1月21日です。
ここにきてAnaheim市会議員の中にも、「勝ち目が薄いのであれば、これ以上の裁判は、税金の無駄遣いではないのか?」と、疑問を投げかける人が出て来ました。
また同時にチームにとっても、裁判が長引けば、イメージの悪化につながってしまいかねません。結果がどちらにしても長引けば、儲かるのは関わっている弁護士だけです。
地元放送局チャンネル9が2006年期からドジャーズの放送権を買い、エンジェルズの2006年のTV放送権はまだどこの放送局にいくらで売れるのか決まっていませんので、チームとしては早いうちにこの問題を解決して、2005年もできるだけ好成績を収め、より広いマーケットにアピールして、新しいTV放送権の契約もチームの増収につなげていきたい意向です。そうすればより多くの人々がAngel Stadium of Anaheim及び周辺地域を訪れ、Anaheim市の増収にもつながりますし、必然的にチームからの納税額も増えるはずです。
財政が潤えばチームも強くなり、Post seasonのゲームを主催する場合の経済効果は市にとっても非常に大きなものになるはずです。
さて、じつはすでに、我々にはお馴染みの、カリフォルニアリーグのチームにおいて、ちょうど同じリース契約の問題を、Angelsに先駆けて妥協案を用いてチーム名を改称、マーケティングに大成功を収めているチームがあります。
第22回Inland Empire 66ersの回でご紹介しました、シアトル傘下のサンベルナルディーノ・スタンピードがそのチームです。
球場のリース契約にSan Bernardinoと入れること、という条項があり、「Inland Empire 66ers」というルート66にゆかりのチーム名と、Inland Empire地域というSan Bernardino市よりも大きなマーケットにチームを売り込むべくチーム名変更を試みた際に、Inland Empire 66ers of San Bernardinoとして、契約書の文言に対する違反を回避しました。
この際、サンベルナルディーノ市は訴えたりしなかったのですが、結果として、チーム名変更をやったことでマーケットも広がり、観客動員も増加し、ルート66にちなんだチームロゴもかっこよく変えることでグッズも売りやすくなったのです。
したがってチームおよびその他周辺会社などから入る税収も増えて、とても上手くやっているんです。
もちろん、順位表を含め、新聞などに載るチーム名からは”of San Bernardino”は省略されてしまいやすい傾向にはありますが、San Bernardino市自身、決して損はしていないのです。
(Jan. 17th, 2005)
(第40回) Save the Anaheim Angels?
今回は、第39回のエンジェルズの名称変更問題の続きです。
さて注目の第2回予審は、ちょうど前回の記事が配信された頃、1月21日に行われました。
結局、1回目の予審判断に続き、第2回目の予審においてもアナハイム市側の名称変更仮差し止め要請を却下する、という判断がなされています。
アナハイム市が提出した資料からは、主張されている”市がこうむる莫大な被害”が見受けられない、また、この先の裁判において市側が逆転すると期待される根拠も提出されなかった、という理由です。
この第2回予審についての記事。
さて一方、ドジャーズおよびロサンゼルス市側の反応はどうでしょう?
共同通信の記事にも配信されましたように、ロサンゼルス市長はアナハイム市長に同調し、アナハイム市を支持する表明をしました。
「ロサンゼルス」というカウンティ(郡)も使っている名前は、全ての使用に関して小さなロサンゼルス市が所有権を持っているのか?という点は甚だ疑問ですね。まぁ、市税くらいの額はエンジェルズとしても場合によっては払う用意があると思いますが。
ドジャーズもさまざまなコメントで反対を表明しましたが、裁判には関わらない方針です。
ドジャーズはこのオフ、主力メンバーをことごとく入れ替えてしまったために、実はここ最近、ファンからは非難の目にさらされています。
デポデスタGMがデータを駆使してチームを再構築していますので、強くなる可能性も大きいのですが、ロデューカに続き、ベルトレイもグリーンも、そして我らがノモ投手も居なくなってしまったとあっては、ファンからしたら堪ったものではありません。
そこで、こういう事情を抱えているドジャーズの反応はちょっと面白いので、いくつか取り上げてみましょう。
球団広報部副社長のHoward Sunkin氏は、
「ロサンゼルスにチームはひとつだけで、それはドジャーズだ。」
「エンジェルズは昔ここ(ロサンゼルス)にいた。アナハイムに移転し、その名前を放棄したのだ。もはやロサンゼルスとエンジェルズには何の関係も無い。」
新オーナーのフランク・マッコートさんは、
「ロサンゼルスとオレンジ・カウンティーはまったく別の、独立したマーケットだ。」
「本当のAngelenos(エンジェルズ人とでも訳せましょうか)、本当のファンは、マーケティング・キャンペーンなんかに踊らされないし、誰が本当の自分のチームなのかちゃんと知っている。そして彼らはドジャーブルーの血を流すのだ。」
と幾分なにを言っているのか判りにくいコメント。
ここで私がちょっとひっかかるのは、Angelenosという、スペイン語風の言い回しです。英語風のAngelonianとかではなく。(どちらも一般には使われませんが。)
故意に使った表現だと思われますが、もしついうっかり使っていたとしたら余計に性質が悪いと思います。
モレノ・オーナーがMLB初のヒスパニック系オーナーで、ヒスパニック系のプレイヤーが増えて来ているのを皮肉っている、人種差別的な気持ちの現れでしょう。
ドジャーズがあせるのも無理はありません。
昨年の観客動員数で、エンジェルズはヤンキーズ、ドジャーズに続く第3位でした。
●ヤンキーズ、ドジャーズ、エンジェルズの観客動員数
・ヤンキーズ 3,775,292人(57,546)
・ドジャーズ 3,488,283人(56,000)
・エンジェルズ 3,375,677人(45,050)
ただ、動員総計では上のとおりなのですが、球場のキャパシティはそれぞれカッコ内の数字ですので、ドジャーズ76.9%に対して、エンジェルズは92.5%の席を年間平均で埋めている計算になります。順位こそドジャーズがまだすこし上回っているものの、今までとは逆に集客率では大きく遅れをとり始めているのです。
2000年までのエンジェルズは、ずーっと2百万人すら動員できなかったのですから。
また、名称変更によって、シーズンチケットのキャンセルが数十件出たそうですが、シーズンチケットの売り上げペースは現時点で昨年の28%増、ほぼ影響ないといって差し支えありません。
TVのレーティングも、昨年はゲレーロ効果もあって79%上昇しました。
エンジェルズは、モレノ・オーナーの元本業を活かして、ドジャースタジアムの周りまで!含めて、ベンチュラ、ロサンゼルス、オレンジ、リバーサイド、サンベルナルディーノの5郡を越えて網羅するロサンゼルス地域全体各地あちこちに、「City of Angels」の真っ赤な看板をキャンペーンしています。
一方ドジャーズの方は、今年のスローガンをわざわざ「This is L.A. Baseball.」にして、”オレンジ・カウンティ以外”の地域にキャラバンを張っています。
どうやらやけに露骨ですね。
公式には、このスローガンは、エンジェルズの名称変更前に企画していたものだ。と発表していますが、後からそう言われても・・・。
ドジャーズのキャップの、「LA」のロゴの右横に「of Los Angeles」と刺繍した特製キャップをセリグさんにプレゼントしてみたり、ちょっとこのマッコートさんというオーナーは、ビジネスを度外視して意固地になっているようです。
この方は、数年前にエンジェルズの買収にも名乗りを挙げたことがあるのですが、・・・そうならなくてホントに良かった。
ただ、「The O.C.」という番組のヒットや、日本でも一部ではオレンジ・カウンティ系と呼ばれているロック・グループの流れがあったり、私も、オレンジ・カウンティーにはロサンゼルスとは一線を画する文化があると感じていますが、エンジェルズのモレノ・オーナーは、ファンの反対を押し切ってまで、どう考えているのでしょう?
実のところ、モレノさんの目的はTV放送権にあります。
スペイン語圏でのチームのプロモートも念頭においています。
そう、ちょうどヤンキーズが日系企業が数々スポンサーに付くなど、マツイでずいぶんと収入を増やしたように、メキシコやカリブ海の国々、南米の一部も視野に入れた場合、O.C.エンジェルズでは何がなんだか分からなくなってしまうのです。
それともうひとつ、オレンジ・カウンティーにはネットワークTVステーションが無いのです。住民は、ロサンゼルス局のTVを観ています。放送業界にはテリトリー区分があって、オレンジ・カウンティーは独立した地域を持っていないのです。
観客動員は、既に92.5%に達し、平日のロイヤルズ戦やデビルレイズ戦をどう埋めようか、というレベルまで来ていますので、これ以上の大きな増収は望めないのです(ちなみにこの上を行くのは、カブスの99%、レッドソックスの100.7%[$18の立ち見チケットを含む]です)。
最後に、アナハイム市についてですが、現時点ですでに弁護士費用など裁判費用として20万ドルをかけています。これ以上裁判を続ければ、100万ドルを優に越えるお金がかかってしまうのです。
エンジェルズからアナハイム市には昨年、チケット代金の配当分として球場のリース代金の他に約200万ドルが支払われました。このエンジェルズから来たお金を裁判に使っているんだとは言っていますが、勝ち目が無い裁判を長引かせるのは、正当な使い方とは思えませんねー。
66ersとサンベルナルディーノ市を見習ってもらいたいものです。
(Feb. 16th, 2005)
第41回〜45回はこちら。